3月3日(火) 広島市中区堺町にあるカレー店「百番目のサル」欧風きのこカレーを食べる。

広島市中区堺町にあるカレー店「百番目のサル」欧風きのこカレーを食べる。


今日は血の滾る日だった。少し前に観た映画の中で「女性には年に一度だけどうでもよくなる日があって、そんな日にAV女優に誘われると……」、そんなような言葉があった。まったく当てはまらない。桃の節句らしく、モスバーガーのレシートの色もそれらしいピンクだが、彼岸花のようなシャムシールの赤色で目玉がひん剥かれる日だった。


およそ悪意のない悪で迷惑があり、ウィルスを感染させるような咳ををするのではなく、緊張と不快を周りにうつすような騒音と眼球と、話し方をしているようだった。


とにかく怒りがこみ上げてくるのだ。理由を探せば何かにつけることはできるが、およそ大した事もないのに、周囲の物をやたら蹴りあげたくなってしまう。もはや意味がなく、八つ当たりという言葉がこれほどはまることはないと思えるほど、いかれていた。


退勤後にカレーを食べに行こうと思っていたので、終わり良ければすべて良しにならい、なるべく気を静めて職場を出ることにした。こんな時の一人の静寂は、限りなく聴こえてくる。


「百番目のサル」で欧風きのこカレーを食べる。怒りと同様に食べ物を選ぶのにおこりはない。眼鏡を外して棚に並ぶ器をぼやけながら、ぼっとする手前にいる。こんな時は驚くほど頭が明晰にあるように思えて、自然と紙に文章を書いている。荒れ方とは裏腹の淀みない言葉が綴られていき、何を求めていたのか釈然する。話を聞いてくれる存在だ。他人でも、自分でもかまわない。


カレーにバターの香りとキノコの風味が溶けていて、今の舌にはただそれだけだ。漬け物もそれぞれで、わたしはらっきょになりたい、そんな欲が浮かんでくる。


怒れるのは、不満だろう。どんなところからそんな不満を持つというならば、退屈、これほど気分を高ぶらせる怒気はない。


空腹による苛立ちならおさまるだろうが、そもそもすでに凪の状態にあるから、カレーが何かを自分に与えたわけではない。帰って掃除しようと思っていたが、もうやめることにした。ただ文章を書きたい、そう思ってモスバーガへ。一日はブラームスの交響曲第3番の第4楽章に、燃えて静まる。

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