2月1日(土) 広島市中区榎町にある焼菓子店「コナサン」のタルトとクラフティを食べる。

広島市中区榎町にある焼菓子店「コナサン」のタルトとクラフティを食べる。


コナサンは難しいと思ってしまう。家の近くにあるものの、なかなか行かずにいるのは、閉まっている、開いていても人が並んでいる、そして目当てのタルトとクラフティがもうない、そんなイメージが浮かんでしまうから。行こうか迷うも、ふられるのがわかっていてぶつからずにあきらめる、そんな感じだ。


しかし近くでランチをとったので、ちょっと時間もあるし覗いてみようと気軽に行くと、幸運なことに前には1人しか客はおらず、目当ての三角形もある。


初めて食べた時から惹かれている。男性が使うにはあまりにも気色悪い言葉で表せば、一目惚れした。その味わいを久しぶりに堪能することができた。


マフィンもいいけれど、やはりタルトとクラフティが好きだ。イチゴのタルトは中のしっとりした生地に驚くべきメッセージがあり、イチゴではなく、フレーズという名の鮮烈な風味が、農耕と酪農の甘さを引き連れて両手を広げる。表面のクルミはまるで邪魔をせずに落ち着いた背景をなし、粉糖も見た目だけでない装飾を加えている。ハッサクのクラフティは果汁を持った果肉がじわりと口に広がり、そのみずみずしい甘みの速さと伸びはこれまた鮮烈でありながら、優しい苦味がすこし遅れて落ち着かせる。プディングはカスタードらしい透明感があり、見た目の彩り通りの爽やかな印象で塞いでいない気も晴れる。


健康な夢心地のタルトと快活な輝きのクラフティは、歪みのない個性ある性格で分かれていて間然とする点はない。ただ自分が心底に惹かれているのは、両方を支えるサブレ生地で、これこそがいつまでもコナサンに囚われる要素なのだ。牛と小麦による大地の恩恵をおもいっきり表現していて、この風味の力強さこそ、コナサンのもっとも素晴らしい魅力だと感じる。


厳選されたフルーツとその味わいを活かした素朴な化粧の味にも共通するが、手をかけて細部まで作りあげるスウィーツと異なり、おおらかな強さと大胆さがある。柔らかく、神経細かい味のスィーツは多いが、それは良くも悪くも島国らしい繊細さであって、外国らしい本物の風土の味を見せてくれるのは必ずコナサンなのだ。スウィーツは生きる力、そんな言葉が浮かんでくるのは、庭先のフルーツ、畑の小麦、隣村のバターとミルク、そして迷子のような鶏の卵、そんな身近なもので家族や親戚、近所にスウィーツを分ける実生活に基づいた風景が存在しているからだ。


予定を決めて訪れれば、時には買えて、時には買えないだろう。それよりも、気が向いた時にまたふらっと買いに行こう。

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