2月1日(土) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでエリック・ロメール監督の「パリのランデブー」を観る。
広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでエリック・ロメール監督の「パリのランデブー」を観る。
1994年 95分 カラー 35mm 日本語字幕
監督・脚本:エリック・ロメール
撮影:ディアーヌ・バラティエ
出演:クララ・ベラール、アントワーヌ・バズラー、マティス・メガール、ジュディット・シャンセル、マルコン・コンラット、セシル・パレ、オリヴィエ・プジョル、オーロール・ロシェ、セルジュ・レンコ、ミカエル・クラフト、ベネディクト・ロワイヤン、ヴェロニカ・ヨハンソン
エリック・ロメール特集は3つの作品で構成されるこのオムニバスで締めくくられた。「喜劇と格言劇集」が終わってしまい、どこか自分は緊張の糸が切れたように今日の映画で寝ていた。
第1話の「7時のランデブー」では、モンパルナスのマーケットでの周囲に溶け込んだカメラワークとシークエンスにより、もうこの作品の良さを味わいきった気になってしまった。含みのある表情で男女は会話され、女は焦らし、男は積極的に迫っていく。このやりとりは第3話の「母と子 1907年」でもより執拗に繰り返される。第2話の「パリのベンチ」でも似た演出はあったのかもしれないが、残念ながら、ほとんど眠っていた。
手持ちカメラで人物を追うような画面が多く、パリの街角を様々な場所と角度で忙しく、止まらずに捉えている。観光客の話も交えられ、この映画は粋な都であるパリの紹介映画となっている。坂、小道、カフェに、リュクサンブール公園、パンテオン、ポンピドゥーなど、パリに好きにはたまらない移動映像が続く。ただ、それが退屈にも感じられる点があるのは、実際に訪れれば小便臭く、犬の糞が南の海のナマコのように落ちていて、メトロで酔っ払いや少しおかしい浮浪者が徘徊するという、清掃が行き届いていない都市らしい自由で制御の弱い点がやはりあるからだろう。それは見栄え良く、笑顔も素敵だが、家は衣服が散乱していて、キッチンに食器が積み重なって汚水と共にあるような、表面ばかりに気が向いた内面の雑然と似たようなものだろう。
もう集中して観る気もせず、眠気も我慢せずにいたら、ピカソ美術館のシーンからエンディングまで、とてもよい流れにあった。絵が好きという自分の趣味もあるが、男女のやりとりが細かく、ちょっとした男女間の危うさを含みながら語られる内容は芸術を主にしていて、エリック・ロメール監督はつまるところ、文学的であり、美術的で、こよなく芸術と自然を愛する人なのだと気づかされる。女性らしい感情的な饒舌と、男性らしい理屈っぽい多弁な演出も含めて。
作られた虚構の画面ではなく、そこにある実存の雰囲気をふんだんに取り入れた作風は「書を捨てよ町へ出よう」なんていう、寺山修司さんの言葉を借りて気取りたくなる影響力がある。とはいえ、肩肘張らず、ありのままの自然な男女の姿を様々なロケーションで映じたのが、この監督の素晴らしさで、気取らないところが、最も粋な気取りなのだろう。
ヌーヴェル・ヴァーグの雰囲気は、やはりまだわからないが、一つの試金石として得ることはできた。成瀬巳喜男監督と同じような分布図の位置で、この監督は女性側の視点でこの先も映画のみならず、多くの芸術作品の解釈に顔を出すことになるだろう。
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