10月26日(土) 広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ・多目的スタジオで「イチニノ Mission-25 In Hiroshima『なかなおり/やりなおし』」を観る。

広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ・多目的スタジオで「アステールプラザ芸術劇場 リージョナルセレクション イチニノ Mission-25 In Hiroshima『なかなおり/やりなおし』」を観る。


作・演出:前島宏一郎

照明:赤城治利

音響:戸室健太郎

衣装・美術・道具:前島宏一郎、梅木彩羽

出演:前島宏一郎、梅木彩羽、幕内さおり、新堀浩司、山田眞子、池田典弘、川村祥太、花島大樹


茨城からやって来られたが、ホームとする県では1度しか公演していないという劇団で、その理由はわからないが、今回は地元の町をモチーフにした作品ということだそうだ。


その内容はアフタートークで知り、入場時にもらった登場人物の関係図が載ったチラシを見ていなかったので、劇中はどういった物語が展開されているのかつかみとれずにいた。記憶と情念が散逸したように各シーンは組み合わさり、一脚の椅子を主とした小道具の少ない舞台で、いくぶん狂言のように情景への想像力が問われる舞台となっていて、途中でなんとなく登場人物の造形を描くことはしたものの、それは輪郭線の途切れてしまい、肉体も背景も混ざり合ってしまった三次元的な青い水彩画のようだった。あまり明るくない青の目立っていた照明のなかで、まるで海中のなかでスローモーションのように動く女性の姿がそんな印象を植え付けたのだろう。


ジャブというか、ラッシュのように勢いよく言葉を打ち続ける時もあり、台詞を被せることもあり、断続的に回されるのもあり、多くない登場人物で演じられる室内楽らしい各楽器の音色の立った構成ではあるが、物語が宙に浮いたまま残ってしまうのは、作風を解する感覚を持っていないからだろうか。


鋭く情動を揺さぶる効果のない、深層心理にそれとなく影響を与える形象を持たない音楽のなかで、和むよりも緊張を与え続ける芝居が続き、照明が表情の陰影を骨相に沿って様々に変化させて、時には瞳が潤む様に見えて知っている誰かの面影が現出するようだった。


古臭さはなく、自分の価値感からすると新しい感性なのだが、目新しい世代が描かれていたわけではなさそうだった。土地と家族に揺れ動く遠く多い数字の中で、人の心は少しずつ動いている感じがした。主演の梅木彩羽さんの声が大なり小なり響いていて、若さのある声が今の人らしく聴こえた。


昔のような体当たりの人間性ではなく、なにかを手がかりに少しずつ身内を知っていくような希薄な関係性は、はかない空想と脆さが宿っているようで、どことなく悲しかった。

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