10月5日(土) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでハン・ジェリム監督の「観相師」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでハン・ジェリム監督の「観相師」を観る。


2013年 韓国 139分 カラー Blu-ray 日本語字幕


監督:ハン・ジェリム

脚本:キム・ドンヒョク

音楽:イ・ビョンウ

撮影:コ・ナクソン

出演:ソン・ガンホ 、チョ・ジョンソク、イ・ジョンジェ、ペク・ユンシク、イ・ジョンソク


小説や漫画に様々なジャンルがあるように映画も多岐に枝葉が伸びていて、この壮大な作品を前に、いかに多くの物が氾濫している中で偏った点しか観ていないことに気付かされた。


一つの所に少しも留まらないこの作品の流れは、文明の爛熟や、科学技術の行き過ぎた発達に、もはやアマゾンの大河のように濁ってしまった中での魚達の繁栄のようで、混沌に少し秩序を与えた時代の群が表れているように思えた。


観る者を飽きさせない効果的に細分化されたカットの応酬に、カメラは情報社会の人工知能のように、人間業というよりも、機械らしい正確なオートメーションのようにパンして、ティルトして、ロングショットにズームと、あらゆる技法をメカニカルの持つ自然によって巧みに操り、焦点は各スポットを怠けることなく的確に絞られる。


2時間を超える物語は観る者を飽きさせず、展開はどのようになっていくのかと常に豪華な餌を風呂敷に、それも整然と広げるので、観ていて我慢を強いられることもない。むしろ最先端の技のオンパレードに食傷気味になるくらいだろう。


物語の構成もわかりやすく、時折疑問に思える節はあるも、扇情的な演出によりそんな小賢しい疑問は払拭されてしまい、すぐに目の前の事に集中されて忘れてしまう。いわばオペラの音楽ように、物語よりも、映像と演出で刺激する説得力が漲っている。


すべてがあまりにもプロフェッショナルな仕事なのだ。俳優達の演技も決して悪くなく、観相師である主人公のソン・ガンホさんは実に素晴らしい役を演じていて、謀反を起こすイ・ジョンジェさんも随所に人を惹きつけてやまない表情と声が各シーンで様々に表れる。


何もない映画作品ではなく、多様に盛り込まれた精密機械のようで、雑はなく、見事に各部品がはめ込まれて稼働している。だからこそ、悪く言えば大味な点も散見されるのだろう。ただしそれを補うほどの映画の魅力も散りばめられている。


好みを言えば、人間味のある無駄と思える長いカットや、煩雑さがないので、一度で足りてしまう。それでも、自然風景は健康的な風情があり、宮廷の豪華な舞台は真っ直ぐな迫力があり、昔の韓国の衣装はどれも優れて目を奪う。真ん中に分けて、片方へ極度に盛り上がった女性の髪型は珍しい造形にあり、口髭と顎髭の凛々しい男性達は、ラップしてもまるでおかしくない格好良さがある。前にも思ったが、韓国の男性も女性も、顔立ちに強さがある。日本人の顔はやはり島国らしい繊細なニュアンスと、今では甘ったるさがあり、どちらが良いとはいえないが、大陸の人らしい大きさをこの映画の登場人物達から感じてしまう。


器用かつ大きく、これだけの作品を生み出せる韓国映画の底力を感じさせられた。

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