9月28日(土) 広島市西区横川新町にある西区民文化センター・スタジオで「広島出身の落語家による横川落語会『第二十六回 柳家小八 独演会』」を観る。

広島市西区横川新町にある西区民文化センター・スタジオで「広島出身の落語家による横川落語会『第二十六回 柳家小八 独演会』」を観る。


演目

反対俥

青菜

ねずみ


ずいぶんと久しぶりに落語を観る気がする。2週間前のことでも昔のことのように感じて、近頃どころか、いつからかそう思うようになったのか、一週間ほど経つと、あとは一ヶ月前でも半年前でもあまり変わらないようだ。


今日はどれも初めて聴く演目で、演じ方の違いよりも、柳家小八さんそのものを観ることになる。こざっぱりした風貌に髪の毛も綺麗にセットされていて、涼し気な顔立ちにダンディな語り口だ。


マクラでは師匠の柳家喜多八さんとその師匠の柳家小三治さんの談話があり、喜多八さんは知らなかったが、小三治さんは最近ユーチューブで知っていたから興味深く聴けた。高田馬場と新目白通りを主に、師匠と一緒に自転車で走る姿はやけに平成の香りを持っていた。


「反対俥」は、車屋の熱のこもった展開は観ている方も汗をかくようで、列車に突進したり、壁にぶつかったりと体を使っての演じ方が見るからに臨場感があった。ぶつかった芸者を川に落とし、車屋は芸者は引き上げないと言うくだりが特に面白かった。


「青菜」は、大家や隠居から見知ったことを真似る他の演目にもある構成の噺で、「子ほめ」のように、再現のうまくいかないおかしなずれがあった。昔と今の落語の違いはほとんどわからないが、三遊亭圓生さんはこれほど体を動かさないから、今の芸風は身振りが大きいのかもしれない。それでも押し入れから汗だくの妻が出てきて、弁慶でおちのつく下りはぐっときた。


仲入り後の「ねずみ」が最も良かった。左甚五郎に語る鼠家の主人の経緯に聴き応えがあり、自分の座る席から斜めに小八さんの横顔を観ていると、人物が乗り移ったような表情があり、あくびも多く出てしまう昼下がりに落語を聴きに来る理由がわかった。映画のほうが安く、得られる情報量も多いが、やはり噺家さんの演じる瞬間瞬間に切り替わる人間が好きなのだろう。腰の立ったくだりは観ている自分にもすとんと落ちて、少々退屈に思える笑いの少ない噺は違った引き込まれ方があってあとあとにすっきりと響いてくる。


福山出身の小八さんは、これからも広島に来る機会があるそうだから、声の通るきりっとした芸風の次回までに、師匠の喜多八さんを観ておこう。

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