8月14日(水) 常滑市鯉江本町にあるカフェ「KAWARAYA CAFE」でえびめん追い飯セットを食べる。

常滑市鯉江本町にあるカフェ「KAWARAYA CAFE」でえびめん追い飯セットを食べる。


瀬戸市よりも栄えていないだろうと思っていた常滑市が、はるかに発展した街と思わせたのが、電車を降りて改札を出た目の前にあったこのカフェだ。えびめんの写真が濃い色で壁に貼られていて、店内もカフェらしい明るい雰囲気に、カウンターで注文と受け取りを行うシステムが洒落た雰囲気を出していた。


それから、観光ルートへ向かう途中の交差点に、広島の土橋の電停近くにある「ピザ・カリフォルニア」に、町田の繁華街にあった「昭和食堂」も見つけたので、瀬戸と常滑の時代についていく存在感はどちらの方があるか決定的になった。


電車に乗る前に腹を満たすべく店に入ると、少し素っ気なさを感じる店員さんの態度も、都会らしいさばさばした感じを受けた。これは瀬戸とは違う。つい、ちょっとしたことで断定を下してしまう。


運ばれてきたえびめんは、初めて味わうおいしさだった。厳密に言うと初めてではなく、トムヤンクンなどで味わったことのある豊潤な海老のだしと甘辛さだ。酸味は抜かれているからすっきりしていて、海老の旨味が全面に膨らみ、その強さを保つように辛さもしっかりあるのだ。正直、カフェで出される麺だからと甘くみていたので、広島にもあればと思える味に嬉しくなってしまった。フライドオニオンだろうか、それともニンニクだろうか、黒くなっているからわからないが、それも薬味らしい強い香りでうまく合い、またパクチーとの相性が実に良い。麺も少ないかと思ったが、下のほうにたまってあり、追い飯もただの白米ではなく、チリで味つけされて、それに揚げ玉みたいなものもあり、ただ食べるだけでは、味つけが足りなくも悪くない味で、これをスープに入れると、考えた結果の組み合わせだと腑に落ちた。値もするが、本当においしい麺だ。


辛いのでゆっくり食べている間に、三人組の女性が近くにいて、洗練された清潔な身なりをしていた。大声で話しているから内容がすべて聞こえてしまい、どうやらキャビンアテンダントさんらしく、客からのクレームについて長々と話していた。旅行中の自分にとっては、そういう話を聞くと、愚痴をこうも言うから仕事が嫌いなのかと思うが、仕事への関心が高いからそうなるのだろうと思った。“こいつ、めっちゃ、おまえ、うぜぇ”などの言葉が声高に混じり、上品な、あのキャビンアテンダントという職業とは到底思えないほどで、副流煙を吸っている気分だった。なぜなら、三人の話には落語やコントのような相手への愛情があっての余裕がなく、ただただ散らすだけの、いやに鼻につく会話だったからだ。


職業などなんのあてにもならない。それはその仕事の中のプロフェッショナルだけであって、外面上は上品だからといって、プライベートもプロフェッショナルとは限らない。いや、プロフェッショナルなのだろう。「源氏物語」でも、「失われた時を求めて」でも、殿上人や貴族は陰謀と計略に富み、優れて高い社交界のすました上っ面と、黒ずんだ腹の中が描かれているからだ。


頭皮からも汗を流しつつ、涼しい顔して食べていた自分も、腹の中ではどす黒い考えが渦巻いている。スープの色で今は赤黒くなっているか。それは誰からも見えない、吐き出さなければ。愚痴が愚痴を生み、臭みが臭みを放つ。こうして文章に流すのではなく、本当は腹の穴に、便所の穴に流し込むべきだろう。


カフェらしくない麺を食べつつ、カフェらしい話を散々聞いて、店を出た。

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