5月26日(日) 広島市南区段原にある蕎麦屋「蕎麦高田」でざるそばと昼セットを食べる。

広島市南区段原にある蕎麦屋「蕎麦高田」でざるそばと昼セットを食べる。


美術館を予定よりも早く出て、陰の濃い緑の樹木に囲まれながらベンチに座っていたら、美味しいと聞いていた蕎麦屋を思い出した。ブンチャを食べようと思っていたが、こんな時は蕎麦も良い。場所はわからなかったので、それらしきところまで行き、電話で聞いてから向かった。


開店から10分過ぎだったが、並んでいる。並ぶと聞いていたから覚悟はできている。日差しは強いが外で待ち、30分近く待ってから蕎麦を口にする。


細めの蕎麦は、口当たりがやさしく、すっきりしているも、噛んでいると上品な風味が口にのぼってくる。なぜかわさびを想起させる澄んだ香りで、控えめながら確かな味を持っている。つゆは紫の色を浮かばせるのではなく、切れ味があるのではなく、丸みのある柔らかい味に落ち着いている。わさびの瞬発力は過激な高さではないが風味は新鮮に強く、大根おろし、白ネギも澄まされている。炊き込みご飯は、ついつい実家の味と比較してしまい、味が薄いと思うも、これがいいのだ。香の物も、塩気がなく、乳酸菌による発酵した旨味と酸味があり、素材の野暮ったさは消されるも、歯ごたえは残り、これと米を合わせると、驚くほど炊き込みご飯の味が引き出される。食べていくうちに、輪郭線のはっきりした味ではなく、静かなホルンのような味付けの炊き込みご飯がわかり、枝豆の風味が大きな印象を他を壊さずに味わえる。


この店は素材が静かに活きている。研ぎ澄まされていて、濃い味の好きな人にはやや物足りなく思うかもしれないが、味はむしろ濃いと思える強さがある。それに値段が……、これでいいのだろうか。


茶のかわりに出される蕎麦湯をごくごく飲む。まるで葛湯のようにとろっとしていて、量もあり、旨味がある。めんつゆも多めにあるから、けちることなくそれと合わせて、全部飲み干す。これが好きなのだ。


アクションペインティングのような青い絵付けの器が洒落ている。蕎麦湯の入った急須と湯呑は、それぞれ異なり、赤い絵付けの九谷焼のようなものや、分厚い陶器に鈍い絵付けのプリミティブな物もあった。


聞いていた通り美味しく、値段がやさしい。並んで当然だ。

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