5月19日(日) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで黒澤明監督の「椿三十郎」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで黒澤明監督の「椿三十郎」を観る。


1962年(昭和37年) 東宝 黒澤プロダクション 95分 白黒 35mm


監督:黒澤明

脚本:黒澤明、菊島隆三、小国英雄

音楽:佐藤優

撮影:小泉福造、斎藤孝雄

出演:三船敏郎、仲代達矢、加山雄三、小林桂樹、志村喬


昨日に観た「用心棒」に続く三船敏郎の演じる三十郎なので、続きを観るような気分だった。訊かれて、適当に外を見てつける名前は昨日と変わらないが、桑畑と異なり、椿の意味する役割は大きい。屋敷を飾り、女性に愛でられ、伝達の合図として水に流れる。風の吹き荒れる昨日の荒れた宿場町と異なり、今日は上品な女性の登場する腰を据えた作風で、三十郎の人情はより増して、歳をとって丸くなったのかと思われるように、親しみを寄せやすい人物になっていた。


昨日は比べると荒かった。しかし毒っ気があって今日よりも面白かったのでないかといまさら思った。あれだけ自信満々に立ち振る舞っていた人物が地面を這いつくばるところに、面白さがあり、今日は縄で縛られるくらいの展開で、女性も楽しめる優しい作りになっていた。油断できない状況に対して呑気にする女性達の態度に、首をかいたりと、愛らしい三十郎の一面をどのように思うか。「用心棒」とは変わっていなのだが、昨日の三十郎のほうが懐かしく思うのは、異なった一面を見せられて別の味に気づくようだ。


三十郎に一杯食わされる仲代達矢さんの立ち位置は昨日とそう変わらず、今日は派手に切られて血しぶきをあげる。昨日は弱さを持った人物だったが、今日は同じ穴のムジナのような人物で、二人が並んで歩く場面はとても絵になる。


昨日の無骨さと凄惨さに比べると、単純な、温かい人情物語に思えるほどだ。物足りないと思っている自分はいるが、今日の親しみやすさも持ち味なのだろう。

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