4月14日(日) 広島市中区立町にある韓国料理屋「アグンイ」でビビンパランチとシッケを食べる。

広島市中区立町にある韓国料理屋「アグンイ」でビビンパランチとシッケを食べる。


去年だったか、雑誌かなにかでこの店の存在を知り、行こう行こうと思っていたが、なかなか足が向かわずにいた。そんな状態にある店は、思い返せないくらいにあり、そのまま行かずに消えていく店も多いのだろう。


とにかく韓国料理が食べたかった。手軽に韓国料理を食べられる店は他にもあるのだろうが、知らず、ここは手頃な価格でランチとして食べられる。


冷麺もあったが、ビビンパを頼んだ。可愛らしく、愛嬌のある女性店員さんで、注文しやすい雰囲気があった。


運ばれてきたお盆の上は、一見すると緑がなく、すこし物足りなく思えるのだが、実際はそうでもない。


ビビンパといえば、白米の上にナムルの乗ったかたちでしか体験したことなく、米とナムルが別々に来たので、ちょっと迷ってしまった。米を白い皿に混ぜていいのだろうか。もし違ったら、どうだろうか。


なぜか臆病になってしまい、店員さんに尋ねればいいものを、黙ってナムルだけをかき混ぜた。箸だけで、おそるおそると。


すると店員さんが、混ぜましょうか、と一言差し伸べてくれたので、ではお願いしますと。混ぜる姿を眺めていると、辛いものは好きですか、ビビンパは好きですかと、無言を壊してくれるので、ここは石焼ビビンパはないのですか、と引き出されるように尋ねると、この店は本格的な韓国式なので、石焼きは日本が発祥だと教えてくれる。これは意外なことで、知らなかった。てっきり石焼きビビンパは本場韓国の食べ方だと思っていた。


混ざったビビンパは、自分の働いていたチェーン店でのビビンパとは味が違う。ゼンマイの質、キノコ、ほうれん草のナムルの味付け、辛い肉味噌、たしかな味だ。味の素や、ハイミーなどの味は感じない。


わかめスープも、たっぷりのわかめとダシの味だ。惣菜も、右から豊潤な旨味のスルメ、やわらかい臭みのニンニクの芽、ツルムラサキのようなぬめりとつやっぽい味の何かの葉、とてもおいしい。


キムチは、最近スーパーで買ったのは、1つがカツオがぜん面にあるのと、1つがイカの味がするのだったが、ここのはすっきりしていて、やや辛味と酸味があるも、それが行き過ぎておらず、余分な甘みなどない。漬けたてではないが、これがおいしいキムチだと教えられるような、こざっぱりとした味だった。


これらが思ったよりも分量があり、ゴマ油のかかったサンチュでもあれば……、などと思ってしまうが、じゅうぶんだろう。


食後は初めてみたシッケで、ご飯を麦芽で発酵させた飲み物らしく、松の実と乾燥なつめが浮かび、これが薬膳のような、サムゲタンを想起させるやさしい韓国の味わいがあり、ふと、ロシア圏の発酵飲料であるクヴァースを思い出した。水飴などの思い出もやってくる、生姜でも入っているかのような体の為になる甘味で、似たものを知っているようで、初めて味わうものだった。


満足して会計を済ませて、出口であるエレベーターにいくと、若い、大きくない、可愛らしい店員さん二人が、律儀に、愛嬌良く、頭を下げて見送ってくれる。


ふと、日本昔話で、とある爺さんが、雀の宿で、なにか土産をもらう話を思い出した。


別に爺さんでもないが、小鳥さんのように可愛らしく、愛嬌ある店員さんに見送られると、歳とったと思わせられるじじいらしい感慨が浮かんでくる。


最近、ヤフーのサイトから、ミシェランの三ツ星に関する記事を読み、とある経営者が語るには、店に大切なのは、1に雰囲気、2にサービス、3に味、とあった。味が良くても、雰囲気への影響は小さい。サービスが良いと、雰囲気も変わるが、働いている人が良いと、雰囲気全体が変わる。


味のある人間ではなく、雰囲気のある人間になれないかな。小さくても、若くても、雰囲気を作るのだから、大したものだと感心してしまう。

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