1月14日(月) 広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザオーケストラ等練習場で「ALL NEW YEAR CONCERT」を聴く。

広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザオーケストラ等練習場で「ALL NEW YEAR CONCERT」を聴く。


ヴァイオリン:エリック・ロベレヒト

ヴァイオリン:金原ソフィ絢子

ピアノ:野村涼子

ヴィオラ:青野亜紀乃

チェロ:マーティン・スタンツェライト


ヨーゼフ・ハイドン:弦楽四重奏曲 変ロ長調「日の出」

細川俊夫:ヴァイオリンとチェロのためのデュオ

セザール・フランク:ピアノ五重奏曲 ヘ短調


ハイドンは「日の出」という名がつくとおり、嫌味なく、明るく、さっぱりした曲だった。明朗で爽快な音色が、新年明けましておめでとうございます、という意味を込めての選曲どおり響いてくる。


細川俊夫さんの曲は、思えば、三日前のエリザベト音楽大学での公開講座で、細川俊夫さんの隣に座っていた人物が、エリック・ロベレヒトさんで、ベルギーでオペラ「班女」を演奏したきっかけで友人関係になったそうだ。二人が再会を嬉しんでハグしていたのを見ていたので、その場面の意味がエリックさんによる曲に対しての経緯と解説で納得できた。


細川俊夫さんの曲を説明するのに、カリグラフィーという言葉がほとんど使われる。この曲もそうで、ヴァイオリンとチェロが張りつめた神経で、音の線を描く。はっきりした音のエネルギーを宙に見て、休止に、聴き手自身が絵を描く。書き初めなんて言葉が浮かぶが、この音の習字は達人の手で、晴れやかにではなく、幽玄に筆が運ばれる。


ふと、日本の伝統芸能を考えてしまった。歌舞伎は少し違うが、能楽や落語は、観るものが場面を想像する。細川俊夫さんの曲も似たもので、やはり日本の古典芸能と深い関連があり、それだからこそ世界中でとりあげられるのだろう。


明治期の日本の画家が思い浮かんだ。誰とははっきりしないが、おぼろげで、西洋絵画の様式を取り入れたが、あくまで借り物のような作品として、そこまで個性的な魅力はないという印象をもっている。


昔の日本映画を飾る素晴らしい日本の作曲家も同様かもしれない。和の文化を取り入れても、枠組みがどうしても西洋から外れきれない気がしてしまう。その点、細川俊夫さんの曲は、あくまで日本という枠組みのなかで西洋音楽を取り入れて、全く異なった新しい表現を確立しているようだ。


それは最近とある場所で、クミンシードの効いた吸い物をいただき、日本料理の枠の中で異国の食材をうまく活かしていると感じた、それと似たようなものだと思ってしまう。


フランクは作品が大きく、やや冗長にも感じる。それでもフランクという作曲家が好きだから、ハイドンに比べると暗く、ものものしくても、好んで聴けた。昨日買った象徴派の画集のなかの、ギュスターヴ・モローの絵がいつまでも頭に浮かび続けた。叙情性が強すぎても、ショーソンの「詩曲」やヴォーン=ウィリアムズの楽曲が嫌いでない自分は、センチメンタルな情感に惹かれてしまう。前ラファエル派からナビ派まで、フランクの楽曲を聴きながら、買ったばかりの画集が頭に浮かびっぱなしだった。


そしてアンコールは、ハイドンの第4楽章が再び演奏され、親和に富んだ睦まじい演奏に、演奏会はとてもすっきりした気分で閉じられた。

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