10月28日(日) 萩の山口県立萩美術館・浦上記念館を観る。

萩の山口県立萩美術館・浦上記念館を観る。


眩しい陽光の下に輝く山口県立萩美術館・浦上記念館は本館が丹下健三さんで、陶芸館は金子信さんの設計・管理だそうだ。


鑑賞時間に限りがあったので、陶芸館の展示を主に観て、浮世絵などの展示はさっと見流すだけになった。


陶芸館へ向かう廊下に光が射し込み、室内の温度は上がり、意識を眠気へ誘う心地があった。


陶芸館の展示室は暗く、12代三輪休雪さんの展示が主だった。一つ目の奇怪な女性に焼き上げられたおぞましい形や、根源的な肉体器官の露呈など、卵形から発生した具象は観るものに恐れと不安を起こさせる。暗く、奇怪な夢の中に登場する無数のイメージのとある例のようで、漫画にこのような形象を観ることができる。これらが焼物で形作られていることが驚きだ。


特に「古代の人・王墓」は作品への照明が色々と変わり続けるので、巨大な作品はたたずまいを変えて時間の変遷を観るものに提示しながら、作品に刻まれたアルファベットや漢字が古代の文明を交錯させていて違和感と疑問を起こさせるも、文明の歴史を遠くから俯瞰すれば各地域に派生したこれらは一つの流れのなかにあり、とある法則によって同時期に発生する仕掛けの表れでしかないのかもしれないと思わせる。これらも焼物であり、特殊なインスタレーションの効果が発揮されている。


他の作品も規模が大きく、和洋折衷に古代と現代の伝説のモチーフが混在して、やはり現代の漫画にみられる形状があり好みは分かれるが、たくましい想像力の結実した焼物に圧倒される。


他は、山口県の工芸品が展示されていて、焼物やガラス細工などがあった。


たったの1時間で何が観れようか。こんな文句を言い、もっと時間があればと思う心は、人生を履き違えているのだろう。たった1時間で何を観るか。選び、手に入れることを間違えないように、頭を働かせないといけないのだろう。


もっとゆっくり鑑賞したいから、また今度こよう。こんな考えがいくつも消えて、次は二度とやってこない。


もうここには来ないだろう。残念だけれど、それでも楽しめた点がある。そんな心構えで、帰りのバス時間に間に合うよう、急いで自転車をこぎ始める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る