8月11日(土) 広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザで伝承演劇「ヒロシマの孫たち」を観た。

伝承演劇「ヒロシマの孫たち」を観た。


これは被爆者の証言をもとに起こされ、小中学生を含めた20名のキャストによって演じられた。


2014年から始まり、今年で5回目となり、今回で区切りとなるらしい。


実際にインタビューに参加した子供たちによる再現劇は、原爆にまつわる話を、違った形で知ることができる。新聞や記事で知れる話は、重複する内容がどうしてもあり、それぞれの体験は当然違うが、被爆後の広島市内や、人々の姿の描写は似てしまい、過去に知った話として同じカテゴリーでとらえて、新鮮に受け取ることをやめてしまう心の働きが出てきてしまう。慣れてしまい、体験記に対しての歩み寄りを怠ってしまう。


しかし今回の劇は、演出の力を借りて、当時の状況を感傷的ではなく、より正確に伝えていた。当然内容が内容だけに、受けては感傷的になる。被爆者の証言を劇中に交えることで、このシーンを実際に体験した被爆者の肉声から人物を感じて、強烈な情動が劇を通じて迫ってくる。


脚本と演出が素人じみていないので、約一時間の劇はすみやかに運ばれてしまう。熱心な子供たちの演技は、良し悪しを評価することをさせず、個性を直接に観ることに集中させて、とても未来を感じさせるものだった。


今年で一応終わりらしいが、終わらないのではないだろうか。運営の方々の苦労が忍ばれ、何かしらの理由があるかもしれないが、伝承演劇という名がぴったり合う通り、演技をしていた子供たちに確実に被爆者の体験は伝承されていたと観ていた自分は思う。それは観賞した人々にも少なからず伝わっている。


まわりが放って置かないのではないだろうか。この企画は実際素晴らしいと思う。同じ子供たちか、それとも違う子供たちかわからないが、何かしらの形で再び現れると思わずにいられない。それほどこの作品は力があり、未来があり、必要とされるものだと自分は信じて疑わない。

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