8月5日(日) 広島市中区加古町にある広島文化学園HBGホールで広島交響楽団「平和の夕べ」コンサートを聴く。

広島交響楽団「平和の夕べ」コンサートへ行った。


献奏:バッハ「アリア」

ブラームス「交響曲第3番ヘ長調」

ブラームス「ピアノ協奏曲第2番変ロ長調」

アンコール:パデレフスキー「ノクターン」

アンコール:グリーグ「トロルドハウゲンの婚礼の日」


指揮:秋山和慶

ピアノ:ネルソン・フレイレ


この日のコンサートはとても感慨深かった。何がそうさせるのかわからないし、心身に痛みを抱えていたわけではないのに、とても心に響くものがあった。交響曲第3番の第4楽章がこれほど辛く聴こえたことはなく、疾風怒濤に進む弦の音にやりきれなくなった。ブラームスの痛みを聴くようで、この優しい作曲家の内省的な心象を観るようだった。ブラームスを嫌いという人を身近に聴いたことがなく、優しさを持った人はこの作曲家を好むだろう。ブラームスは本当に素晴らしい。ピアノ協奏曲第2番はなんて素晴らしい協奏曲だろう。これほど精妙に構成されていて、精神性の詰まった大規模な協奏曲は知らない。もうほんとうに、心が痛くてしかたがなかった。秋山和慶さんの指揮によって、広響はこれ以上なく統合し、ピアノ協奏曲の冒頭の弦の音から、今日の演奏の質が最高潮まで高まっていることを知らしめた。ネルソン・フレイレさんのピアノは赤児のように研ぎ澄まされていながら、時には年齢を感じさせない強さを持つこともあり、集中力の高さによってブラームスの表現を曲解することなく素直に伝えていた。音楽の愛に溢れた演奏会だと思った。アンコールのグリーグに、事細かに線と色の描かれて、時間が進む物語が見えてしまった。落ち着いた二人の音楽家が、拍手の中に手をつないで歩く姿を観て、心から気持ちが和らいだ。平和の夕べというが、これ以上に平和な夕べがあっただろうかと思わせる時間帯だった。少し感傷的になりすぎたが、平穏にわずかの哀愁を持つくらいが、程よい平和なのかもしれない。

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