7月7日(土) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでトマーシュ・マシーン監督の「ウィルソン・シティ」を観る。
EUフィルムデーズ2018、スロヴァキア映画、トマーシュ・マシーン監督の「ウィルソン・シティ」を観た。
場面と登場人物が次次と展開していく物語は、ショスタコーヴィチにしか見えない背の高いナイーブな主人公とメフィストフェレスのようにまとわりついて助けていく超人的なFBI捜査官が柱になり、過剰な演出が次次と入り、慌ただしく、落ち着かないが、チェコスロヴァキアという国の成り立ちを題材にしているとても重要な要素を軽い調子で確実に表わしている。
スロヴァキア語でハンガリーのことを、マジャルスカか、マジャルスカヤと聞こえた。それはとある国で、ジョージアのことをグルジスタンと呼ぶのを聞くのと同じ歴史を感じられる。
街をアメリカの州の一つに編入して、ウィルソノフという名にするという物語に、コソボを思い出した。大通りにアメリカ大統領の名をつけるあたりが。
チェコとハンガリーに挟まれたスロヴァキアという国の関連性は非常に興味深く、フランツ・ヨーゼフという人物が言葉に出たり、民族のるつぼという街の特徴としてユダヤ人も登場する。
サスペンスとコメディという枠にはめられるが、息を切らさずに連続して散りばめられた言葉は、あまりにも早く、弾丸のように強力な意味が込められていて、それが何を背景にしているか考える間もなく次から次と飛んでくるので、一つ一つを吟味できたらさぞ面白いことだろう。
汚い言葉や振る舞いも、知性と鋭い批判精神を感じられると面白みがある。愚痴一つ言うにも、ユーモアを込めて、余裕を背後に存在させることで、相手にとって嫌気を催すものにするのではなく、許容でもってうまい具合に物事を調理して味わい深いものにさせる。それは嘘を扱うやり方に似ていて、使い方を間違えれば相手を不快にさせるが、見事に使いこなすと素晴らしい効果を発揮する。
EUフィルムデーズで上映される作品は、ジャンルはそれぞれ異なるが、考え抜かれた意図によって選ばれていて、その作品一つでその国のアイデンティティを形成する要素に、一つの側面からとはいえ、必ず導いてくれる。
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