6月27日(水) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでジョン・フォード監督の「アパッチ砦」を観る。

広島市映像文化ライブラリーでジョン・フォード監督の「アパッチ砦」を観る。


破滅に向かっていることを途中で知りながらも、気品のある片意地な気質は変えられず、無謀な自殺行為を進んで行うのは何故だろうか? それも一人ではない。多くの部下を連れてだ。


馬が荒野を激走する。それは血が滾ってしかたがない。スクリーンで観れる喜びが迸る。


入植者による現地住民への迫害は生物同士の根源なる争いだ。縄張りは命だから、当然命を賭して戦う。インディアンを虐殺した歴史は、当然モンゴロイドとしてのつながりから、自分はインディアンに加担していた。しかしこの映画を観てしまうと、白人に肩入れしたくなる。それは映画の登場人物に関連する家族や背景を知ってしまうからだ。結局、弱い物は権利を失う。それは生物の基本の掟なのだが、人間たる所以を慮るなら、理性に基づいた共存を徹底して探すべきだから、やはりインディアンを迫害した白人を擁護できない。


砂埃をあげて疾走するアパッチ族が通り過ぎた後に遠く残るサースデイ中佐の騎兵隊の静かな亡骸のシーンは、あっけない。それまでの豊かな人間ドラマは一息で飲まれる。一瞬ですべて奪っていく嵐のような死をアパッチ族の暴風は見事に体現されている。


人間から見れば恒久なる自然を象徴するモニュメントバレーの美しい風景の中に繰り広げられる小さな争いは、小さくて儚いからこそ美しい。馬の激走は命の躍動で、国のため、民族のためと、争う理由はそう変わらず、誇りを失わずに懸命にあの時代を必死に生きた人種の争いが、人類の発展の影に無数に消えていて、今もその仕組みは変わっていない。

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