6月 広島市西区横川町にある山小屋シアターで「劇団マージブル座長公演『絆(コネ)』」を観た。

横川の山小屋シアターで劇があるそうなので行ってきた。


劇団マージブル座長公演「絆(コネ)」


脚本

ザ・ギース(ASH&コーポレーション)

シソンヌ(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)

ラフレクラン(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)


何かしらの劇だろうと詳しいことを知らずに、開演5分前に着くと、残り2席しか空いておらず、最前列の真ん中と最後部から数えて3列目の端しかないなので、前の席に座ると、ほとんど待たずに公演が始まり、元気よく三人が出てきて大声で前説が始まり、観客は笑いで暖かく迎える。


昼寝したばかりでまだ覚めきっておらず、少しふてくされたような寝ぼけかただったから、威勢のよい前説と掛け合いを目の前にして、「これは間違った場所に来たようだ」と観客の笑いと場の雰囲気に温度差を感じて、ひどく後悔した。


始まったコントを観ながら「どうして観客はすぐに笑うのだろうか」と思いながら、「笑いの感性は自由だから他の人は好きに笑って当然だし、自分も無理に笑う必要はない」と決め込み、下手に構えるようになってしまい、「少しのことでは笑わないぞ」という変な気構えになって窮屈になってしまった。


とはいえ、10分もすると自然とその場に馴染むことができた。浅草の東洋館で落語や漫才などは観たことがあっても、コントは初めてだったので、勝手がわからなかったが、ようするに笑いを主にした劇だから、感じるままにいればよいのだ。


コントは途中から面白くなってきた。5つのコントがあり、それぞれの話が独立しているようでいて、最終的に5つ目のコントでそれまでの話がきれいにまとめ上げられるから、構成としての妙がわかりやすく表れていて、つまらなく思えた2番目のコントも意味を持ち、重層的な面白さを感じることができた。


バラエティ番組を観ないから、「落語のような芸と品格などない下品な笑いのコントなど……」と正直見下していたが、演じることに対しての技術は方法は違えど熱の入れようは結局変わらないのだし、可笑しいまま息をつかずに瞬間的に動いて話をしている姿の裏では、どんな些細な点からでも笑いを引き出す為に予防線が鋭く張られていて、常に緊張感がみなぎっているようなところは、笑いの熟練者のピエロだからこそ背後に得体の知れない深遠な恐ろしさと冷徹な眼力が同居するのと同じことなのだろうと、さすがの間の使い方に磨かれた腕前を感じた。


アフタートークでねたについて表現者としての解釈と演出の難しさや、コントの構成の配置などの裏話を聞いて、台本に対してどのように演出するかは劇であることの根本は同じで、興味深くうなずくことができた。


ふと、能と狂言を思い出した。表裏一体だろうか。


裏だけを偏見で見下げることをしてはいけない。もっとコントも観に行こうと思った。

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