第20話 音と挑発

 ピピピピ――。

沈黙を打ち消すように、突如電子音が鳴った。

南雲はビクリと身体を跳ねさせる。

「す、すいません!」

 鞄を漁る南雲を見て、葉山は怪訝そうな顔をした。

「なんで、スマホ持ってるの……?」

 南雲の手には初日に回収されたはずのスマートフォンがあった。

「これは、執事に頼んだんですよ。外とは連絡取れないままですけどね」

葉山の場所からは画面は見えない。南雲はすぐに画面を閉じて鞄にしまう。

「そ、そういえば、先輩は部屋に戻らないんですか?」

「うーん、どうしようかなぁ」

 そういうと葉山は南雲の背中から抱きつく。

 南雲は身体が小さい方なので、葉山の身体にすっぽりと収まってしまう。

「このまま帰らなくてもいいんだけどなぁ」

 耳元で囁かれたその言葉は、少し、いや、分かりやすいほど挑発的だった。

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