第2話 再婚

彼女の秘密を知ってから早、2ヶ月が経った。特になんの変哲もないが、、、、まぁ強いていえば、氷無がうざいくらいだ。後、2週間位で、高校も夏休みに入る。学校の試験も中間、期末と終わり、僕は中間は2位 期末は1点差で1位をもぎ取った。いや、まぁ悔しかったのだ。仕方ないだろう。そんなことを思いながら玄関のドアを開ける。

「、、、、ただいま。」

「 」

誰の返事もない。いつもの事だ。我が家には夜か朝にしか人が居ないのだ。

部屋に行き、部屋着のスエットを着て、ウィッグも外す。ウィッグを付けてからわかったことなのだが、長い髪の毛とは案外めんどくさいのだ、ロングヘアーの女子に敬礼!

なんて言いつつ、リビングに出てくる。渇き切った喉を潤す為に、コップに水を入れて飲む。生き返った。そして晩御飯の支度を始める。親が夜遅くにしか帰って来ないので晩御飯、朝ごはん、弁当は自前だ。炊飯器に米と水を入れる、そして『炊く』のボタンを押す。これで完了。現代の科学は優秀だな。

お米が炊ける間に、僕は和室に入った。和室の1番奥、そこにはひとつの仏壇があった。その前まで行き、正座して両手を合わせる。毎日の習慣だった。

、、、

「母さん」

僕の母親の村瀬 冬菜(むらせ ふゆな)は10年前、僕がまだ7歳の頃に亡くなった。元々体が弱く、僕を産んでからもずっと入院をしていた。正直僕の母がどんな人だったのかはよく知らない。父もあまり話そうともしないし。でも1つ覚えてるのは僕が女装をするようになったのは母の影響なのだ。

「母さん。僕、上手くやって行けるかな?」

いつもの様に手を合わせて。お祈りをする。

それから、キッチンに戻って晩御飯の支度を再開。冷蔵庫から豚肉、キャベツ、玉ねぎなんかを出して、一口サイズに切る。キャベツは炒めると小さくなるので大きめのサイズで、切り終わったらフライパンを温めて、油を入れる。フライパンを揺らして油がサラサラ動くようになったら、肉、玉ねぎ、キャベツの順で炒める、そこに焼肉のタレを投入し、5分位炒める。これで完成。ピーピーと炊飯器が出来上がりの合図の音を鳴らす。僕は2人分のお茶碗と皿を出して盛りつけをする。

「ただいま〜」

玄関から帰りを知らせる挨拶が聞こえてくる。父だ。

「おかえり、父さん。」

僕は父の方を向かず、盛りつけをしながら言う。

「あぁただいま、桜花、、、おっ今日は焼肉か?いつもすまないな。」

中学に入ってから、父の仕事が忙しくなり、帰るのが遅くなった。そのおかげで僕は自分で料理することを覚えて今に至る。

「別にいいよ。いつもの事だし。」

父は少し下を向いて考え込んでいるように見えた。

「、、、、桜花、話が、あるん、、だ。

まぁまずは飯を食おう!」

「あ、あぁ」

箸と食器がぶつかる音がする。先に口を開いたのは父はだった。

「、、、父さん、再婚しようと思うんだが、どうだ?お前が嫌って言うならしないし、最悪別居なんかでもいい。」

母が死んでから10年、父もまだ若い。人生をやり直しても別に罰は当たらないだろう。

「、、、、別に、いいんじゃないか?もう母さんが死んでから10年経つ。」

「、、、、そうか、、、、ありがとう。、、、明日は休みだろう?早速会いに行かないか?」

「え?」

「相手の家族にだよ。向こうは娘さんがいるらしい。確かお前と同い年だったかな。」

おい、親父。あんたは思春期真っ盛りの男子の家に義理の妹が、姉を住まわすのか!、、、まあ、別に変なことなんてこれっぽっちも考えてない。、、、、ほんとだぞ?

「別に構わない。」

そう僕が言うと父はポケットからスマホ出して、メッセージを打っていた。数秒後には よし!と言ってガッツポーズしていた。いや、向こうさんも返信早いな。

「明日の10時にここに来るそうだ。」

「わかった。」

それだけ言うと僕は皿を洗って部屋に戻った。ベットに倒れ込んで考える。

「女子、、、、か。」

どんな人なんだろう。趣味はなんなんだろう。そんなことを考えていると。暗い闇の中へと誘われた。

この時僕は、明日が人生最悪の日だということをまだ知らない。

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