女装男子と男装女子

牡蠣 大地

第1話 バレた、、、、?

僕の名前は村瀬 桜花(むらせ おうか)、桜に花と書いて「オウカ」と読むのだが訳あって「ハルカ」と呼ばれている。なんでそんな呼ばれ方してるかって?まぁおいおい分かってくるだろう。そんなわけで、僕はどこにでも居るただの高校生―――だったら良かったのにと何度思ったことか.......僕には誰にもバレてはいけない秘密がある。それは―――「女装して高校に行っている」ことだ。別に趣味でもないし、そういう性癖がある訳でもない。この事については来る時が来たら説明しよう。そろそろ昼休みが終わる。教室に戻ろう。


「次の授業は数学だったっけ」

僕はさっきまで入っていた『女子トイレ』から出てきてそのまま教室へと入っていった。

「お〜ハルカ〜どこいってたんだよ。」

「うん。ちょっとトイレに」

「そか、そろそろ授業始まるぜ〜」

「うん。ありがとう、氷無くん」

彼は氷無 優斗くん(ひなし ゆうと)僕のクラスメイトで、やたら僕に絡んでくる。正直少し苦手だ、女装をしているとはいえ中身は男、いつボロが出るか分からないからできるだけ人との関わりを避けたいのだ。さっきも言ったのだけれど、僕は『女』としてこの学校に通っている。故に名前も女子っぽくしなくてはいけないと思い。「オウカ」から「ハルカ」に変えたのだ。そっちの方が女の子っぽいだろ?笑

「そろそろ移動しなきゃ」

僕の通う、私立近江原高校では数学と英語は試験の点数によって、発展、標準、基礎、と言うふうにクラスを分けて授業を行っている。その方が授業が進みやすいし、だいたい同じレベルの人と授業しているのでわからない人のために授業が止まることもあまりない。今は1年の1学期だから中間テストまでは学校のテストはない。今のクラス分けは入試によるクラス分け。良い方から5B教室、1-5、そして1-4、と言うふうにクラス分けがされている。5Bというのは5階フロアのB教室ってこともちろんA教室もあるし、4A教室もある。ちなみに僕は5B教室である。入試は学年2位........1位はと言うと


「キャー、葵君よ!!」

そう女子が叫ぶと周りにいた女子が全員群がってくる。キャー、キャーと叫びながら...ね

彼こそが、近江原高校入試首席『伊藤 葵』(いとう あおい)だ。彼は男なのにポニーテールをしている。女装している僕でさえ、少々茶髪のセミロングのウィッグをしているのに、羨ましい限りだ、全く。ここら辺で、読者から『この学校の校則はどうなっているんだ!男子でポニテとかBLが萌えるだろ!』なんて声が聞こえてきそうだけど、ここ、私立近江原高校は一応進学校だが欧州の学校文化を取り入れて多少の、ファッションは校則違反にはならない。じゃ、どこまでがOKかって?知らないよそんなもの、教師の判断だろ?

「やぁ、葵くん」

「あぁ桜花さん、こんにちは」

いつもの挨拶。彼は別段イケメンでキャー、キャー言われてる訳ではなく、むしろその逆、なんとも顔立ちが幼いのだ。女装なんかさせたら間違いなく美少女になれるだろう、僕はそう心の中で思っていた。

チャイムがなり授業が始まる。進学校なだけあって、授業中は静かなものだ。5.6時間目の授業を終え。SHRが終わる。

「起立!礼!」

「「さようなら」」

「はい、気をつけて帰ってくださいね」

よし、帰ろう。さっさと帰ろう。そう思った矢先。

「村瀬さん。ちょっといいかな?」

なんと担任に呼び止められたのだ。クソ、帰せ、僕を帰せ!そう思いながら、担任の渡辺先生の方へと行く。

「なんでしょう。先生」

「これ、職員室まで持って行ってくれないかな?」

「分かりました。」

と言ってノートの束を渡された。お、重いっ、なんでこんなの仕打ちを受けているかと言うと、この学校では1学年5クラスで、入試の1位、2位、3位、4位、5位がバラバラのクラスになり、そのクラスの委員長になるという、超絶にめんどくさいシステムがあるのだ。故に僕は委員長で、仕事をさせられてるって訳。

「失礼します。渡辺先生はいますか?」

「あー、村瀬さん。こっちこっち〜」

僕は先生の机にノートを置いた。

「よっこらせっと」

「ぷ。なんか村瀬、オッサンだね〜笑」

先生は今年新任で入ってきた24歳の女性教師でなんというか、乗りがまだ子供なんだよな。

「からかわないでください先生。」

先生は笑いながらごめん、ごめん、と言うが、絶対に反省してないな。

「失礼しました〜」

先生が手を振って見届けられながら、僕は職員室から出た。

「さーて、帰ろう。」

と僕は昇降口の方へと足を進めるが、ふと止まり90度回転して直進した。

「やばい。トイレ」

僕は近場の『女子トイレ』へと入って行った。

「まぁ、普段から女子トイレを使うのちょっとあれだけど、この格好で男子トイレに入る訳にも行かないからな〜」

まぁ当然だ、この格好で男子トイレに入ろうものなら一瞬で僕のことが知れ渡って良くて停学、最悪退学だろう。

「ま、仕方ないよな」

1番奥の個室のドアノブに手をかける。そして入ろうと扉を開けたら瞬間、そこに信じられない光景が広がっていた。


――――奴がいるのだ。近江原高校首席『伊藤 葵』がそこにはいた。

「「、、、へ??」」

同時だった、よく見ると葵はなんと女物のパンツを脱ぐ途中だった、、、、、待て、今、女物のパンツと言ったか?こいつは男のはz、、、

「いつまで見てるのよ!!!!」

「グハッ、、、、ッッ」

僕は気がついたら床にいた。そしてお腹のあたりがじんじんと痛い。そして気づいた。『殴られたのだと』

「っっ痛ってぇな!何すん、、、、るんですか!」

おっといけない、男口調になりかけた。危ない危ない。

「あんたがっ!いつまでもあたしのパンツ見てっからでしょ!変態!エロス!ドスケベ!」

いや待て、いきなり殴っといてその罵倒はないだろ。何が何だかわからん。

「いや、ここ女子トイレですし、あなた伊藤 葵よね?なんで男のあんたがここに居るの?」

「っ、、、、」

眉間に皺を寄せたいた葵だが観念したのか、はぁ〜とため息を着いた後でこう言い放った。

「......見ての通りよ。私は女よ。全く、せっかくいい具合に隠せてきたのに、なんなのよ、もう!」

いや、僕に聞かれても。

「いい?ここで見た事は内緒にしなさいよね。バレたら私学校に居られないから。お願い。」

人には言えない秘密があるのものだ。かく言う僕にも秘密はあるし、、、

「まぁ、別にいいけど、なんで男装なんて、してるのよ?」

「べ、別にいいでしょ!あなたに関係のないわよ!」

ま、その通りなんだが気になるじゃん?やっぱり。どうやったら口を割るかを考えた。、、、、、、うん。言うしかないのかな?と思った。最後の切り札を

「じゃ、交換条件でどう?」

「交換条件?」

「そ、私の秘密をひとつ教える。そしてあなたは、何故そんな格好してるのかを教えてくれたら、絶対に誰にも言わないと約束するわ。」

「―――いいわ。」

よしっ!心の中で特大のガッツポーズをする。心の中でね。

「あなたの秘密を教えるのが先。」

「ああ、いいだろう。」

僕の秘密、、、それはもちろん、僕が『男』であることをを教えるのだ。やばい。今更緊張してきた。どうしよう、、、、

「ほら、早くしなさいよ。」

「――、私、、、いや、僕、実は男なんだ。」

「、、、、え?」

一瞬、時が止まったように思えた。実際止まっていたのかもしれない。そのくらい緊迫していた。

「男なんだ。僕。ほら触ってみる?」

そう言うと。葵の手がだんだん僕の股間に近づいてきた、、、、、、、あと数センチのところで、葵はハッと意識を戻してしまった。

「う〜〜〜〜〜〜〜」

と、顔を赤くしながらうずくまっている。そして、

「変態!死ね!3度死ね!」

「待て待て、君はどこを触ろうとしたんだい?」

「え?」

確かに触る?とは言ったけど別に股間を触れなんて言ってない。

「確かに触れとは言ったけど、別に股間に触れなんて言ってないよね?」

「はっ!、、、、う〜〜〜〜〜〜〜」

と、また顔を赤くして、両手で顔を隠していた。いや、面白いなこれ。

「ってか、あんたが男ならなんで女子トイレにいるのよ!出ていきなさいよ!」

ご最もとある。退散しよう。

2人で昇降口からでて、帰路についていたとき、先に口を開いたのは向こうだった。

「私」

「ん?」

「私ね、最初は趣味だったのよ。」

「は?急に何の話だ?」

「違うわよ!なんで男装してるかって理由聞いたのはあんたでしょ!」

「ああ、そんな話もしてたな」

「ちょっとね〜あんた!」

「はぁ〜いいわ、私、小学生の頃から男の子の格好や仕草をしていたのよ。それで中学でも男子の格好してたらなんか、妙に染み付いちゃってて、母の意向もあって、高校も男として入ることになったのよ。」

「そんなことがあるんだな」

そんなことがほんとに現実であるのだな、2次元限定かと思ってたのに、ほらあるじゃんなんだっけ?そうそうISだ、あれにも家の方針がなんかで男装してる女の子出てくるじゃん?リアルであるんだなぁ

「だから絶対にバレる訳にはいかないわ。」

「そうか。」

それしか言えない。他人様の家の事情がどうであれ、深入りなんてしてはいけない。 『家族』でもないのだから。

「私、こっちだから、誰かに言ってご覧なさい、末代まで呪い殺してやるんだから。」

こ、怖いこんな奴に末代まで呪われても、孫達に迷惑がかかるからそれだけは回避せねば。

「分かってるよ別に言わないよ。」

そう言うと僕らは互いに背中を向けて歩いていった。

この時の僕らにはこの先に待ち受ける『地獄』をまだ、知る由もなかった。

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