第3話頭の良さは見た目から
こいつ今なんて言った・・・・・・。
馬鹿多い生徒が在籍しているのかこの学校で成績上位に位置するこの俺に向かって頭が悪いだと?
頭に血が登った俺は教室に入りその美少女の前までズカズカと歩いて行く。
「いいか、俺の成績は学年でもトップクラスだ! 頭だってそれなりに回る方だと自負している」
強気で言い返されてもその表情は変わらない。
「大体お前は誰だ! 自己紹介くらいしろ!」
そう言われて確かにお前って呼ばれるのはちょっと嫌だわと生意気に髪をかきあげた。
「私は
くっ、こいつキラの事まで馬鹿にしやがって。
まあそんなことはどうでもいいかとさっさと忘れることにして、本題に戻る。
「さっきの言葉を撤回しろ詩種」
「秘織よ」
「・・・・・・・・・・・・」
呼び方だけでも話を逸らされた俺は更に頭に血が登る。
「詩種」
「秘織!」
「詩種!」
「秘織よ!」
「豚種」
「・・・・・・・・・・・・殺すわよ」
本気の殺意を向けられて若干萎縮する。
「まあお前も俺の事凪って馴れ馴れしく呼んだからもういいか」
秘織は満足そうに頷いた。
「じゃあ話の続きに戻るが俺は頭悪くない、むしろ他の奴らに比べて格段にいいと言える」
「でも勉強出来るから頭の良いって考えがもう頭悪いわよね。ちなみに私は成績悪いわよ」
「そんな頭の良さそうな見た目してるのに!?」
俺が驚いた声を上げると秘織は、ああこれはと言って髪の毛を取り外した。
「はぁスッキリした。結構邪魔だったのよねこれ」
外したカツラの下からは普通に長い髪が出てきて、長さあんまり変わらなくないかと思った。
しかもちゃんと黒髪じゃねーか!
そんな心の中のツッコミを他所に秘織はリボンで髪の両端を結ぶ。いわゆるツインテールとゆうやつだ。
「って、また話逸れてるじゃねーかー!」
その叫びをうるさいわねと秘織に流されて逆に凹んでくる。
当の秘織は少し悩んだ後、じゃあこうゆうのはどうかしらと人差し指を上げた。
「頭悪いが嫌なら、頭が良くないにしましょう。ちょっと賢そうになったでしょ」
「同じ意味だろうが! 秘織、大体お前はここで何をしてるんだ。さっきのカツラといい訳わかんないぞ」
秘織はまた悩んでいる様子だった。
無い頭で何を考えているんだこいつは。
そんな失礼な事を思った自分が相当頭に血が上ってると自覚して、ふうっと息を吐く。
その間に秘織は考えがまとまったようでいつでも話せるといった様子だった。
「まず、ここは部活の部室よ」
「なんの部活?」
「それは格好つけるために後で言うわ」
秘織も大概頭悪いな。
「部活の内容は・・・・・・、そうね・・・・・・。簡単に言えばどうすれば頭が良く見える、思われるかを模索する部活よ」
ーーーーこの高校自由過ぎない?
それになんだよ頭が良く思われるか模索する部活って。
「じゃあさっきのカツラや喋り方もーーーー」
「頭が良く見えるようにするための方法の一つよ! まず黒髪ストレートの前髪ぱっつんって頭の良さそうに見えるじゃない」
うん。頭の悪い考えだ。
「それに加えて喋り方がお淑やかだといいでしょ? 凪も絶対思ったはずよ」
思ってしまった自分が恥ずかしい!
妙に納得仕掛けた所もあったため口に出して反論することが出来なかった。
しかしここまで聞くと他にはどんな事をするのか少し気になってきたため聞いてみることにした。
「他にはどんな事をやってるんだ?」
「そうね・・・・・・、部活としての目に見えてる活動は人の悩み相談とかかしら」
お?
今までのよくわかんない事と違って案外まともな答えが返ってきた。
しかし一つ気になることがある。
「なんで頭良く見せたいから悩み相談なんだ?」
「だって人の悩みとか解決出来る人って頭の良さそうじゃない? それに見えなくても頭良いねとか言われると嬉しいし」
・・・・・・・・・・・・動機が不純だった。
だが俺はそこでいい考えが思いついた。
自分の頭の良さに不敵に笑っていると秘織がゾッとした目で見ていた。
俺は一度咳払いをしてキレて乱れた服を正してから口を開いた。
「この部活に入ろう」
「え、なに? もしかしてセクハラ?」
いやちげーよ! 確かに顔だけは可愛いけどそんななんじゃないし。胸ないし。もしかしてセクハラ?
とても口に出せる事ではないため俺は心の中でだけそんなことを思って、口に出せることだけをしっかりと告げる。
「この部活で、俺が人の悩みや相談を解決すれば秘織は俺の頭が良いことを認めるだろ。だから認めさせてやるのさ! 実力でな」
その考えが案外秘織を納得させるものだったらしく、秘織も楽しそうに笑って頷く。
「いいわ! 見せてもらおうじゃないの。その代わり今のところは頭悪いから、部活の一員として努力してもらうわよ」
それについてはちょっと嫌だが俺も笑って頷く。
秘織は初めての部員だと意外にも喜んでいる様子だった。
その顔が出会ってから見た表情の中でも一番透き通っている表情で俺はついつい見とれてしまった。
いかんいかん見てくれに騙されるな、あいつの中身を思い出せ。
そう自分に言い聞かせるが自然と早くなっていた鼓動はゆうことをきかない。
気を他の方に紛らわせるために色々考えていると、一つ聞き忘れていたことがあるのを思い出した。
「そういえば部活の名前は?」
聞かれた秘織も忘れてたと言って、何故かドヤ顔で仁王立ちした。
「この部活の名前はーーーー。
「・・・・・・・・・・・・」
ここに来て一番頭の悪い回答が飛んできて俺はもう何も言うことが出来なかった。
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