第2話春の出会い
まだ肌寒い風が吹く四月。
一学年十五クラスある
それでもクラスの雰囲気はどこか浮いていて、何か新しい出会いを感じさせるかのような賑わいをみせていた。
そんな中、窓際の席で外を眺めていた俺に近づいてくる人物がいた。
「なんだよ凪。こうゆう雰囲気は苦手か?」
声を掛けられそちらに顔を向けると、じゃがいもを連想させられる体型のよく知る男が立っていた。
「なあキラ、自己紹介やってみないか?」
「初めまして
「はいはいもういいよ知ってる。お前も変わらんなーキラ」
このノリノリで自己紹介した奴はきらめくとかゆう超きらめいた名前だが本体は全くきらめいてない。
ぽっちゃり体型だし髪薄いしきらめいてる要素が無い。なんでこいつの親はこの名前にしたんだか。
「なぁ凪、お前部活には入ってなかったよな。今日俺らの同好会で遊びに行くんだが一緒にどうだ?」
「やだよ、お前らの同好会ってあの妙に神々しい名前した奴の集まりだろ。俺の名前普通だし」
そんな感じの返事だろうと思ってたキラは、まあそうだよなーと言って去って行こうとしたが再びクルっと向き直った。
この流れはいつもの事なので俺は机の上に既にアレを用意していた。
「宿題な、分かってるよ」
「話が早くて助かるぜ〜。流石学年トップを争う凪はちげーな」
そう、俺は頭が良い。
この人数が半端なく多い高校でもトップレベルにだ。
一人で高らかに笑っているとクラスメイトが引き気味に俺を見ている事に気づく。
・・・・・・いや、うん。こんなに人の注目を集められるなんてキラよりきらめいてる。
そんなことを考えて恥ずかしいのを誤魔化しながら席に着くと、宿題を移し終わったキラがありがとなと言って自分の席に戻って行った。
それからしばらくすると担任が教室に入って来て、クラス全体もいつも通りの雰囲気に戻って行った。
それから一日何事もなくいつもの様に過ぎていき、ホームルームを終えた生徒達はそれぞれ部活に向かったり帰宅したり、教室に残って騒いでいる者もいる。
「さて、今日はどうするかな」
いつもならさっさと帰るところだが、クラスの雰囲気にやられたのか自分でも気持ちが浮ついているように感じる。
「けどこれといってすることも無いし、やっぱり帰るか」
教室を出る時クラスメイトに挨拶をして廊下に出る。
まだ教室が変わったのため見慣れない廊下、いつも通りなら左に向かうのだがーーーー。
「まあたまには学校を少し見てから帰るのもありか」
碧英高校はその校舎もとてつもなく大きく。たとえ生徒でもその全てを把握している訳ではなかった。
「それじゃあ行きますか」
まるで新しい土地で好き勝手に行きたい方に歩いて行く時のようなワクワク感を微かに感じていた。
第三棟の二階に位置する場所にやって来た。
そこは人の気配が全くなく、しんと静まりかえっており心無しか肌寒く感じる。
「なんだよ、図書館なんかよりよっぽど勉強に集中出来そうなとこだな」
聞こえるのは自分の足音だけ。
その音を心地よく思いながらゆっくり進んで行った。
そしてあと少しで端に辿り着きそうとなったその時ーーーー。
「ーーーーーーーーすわ。ーーーーです。」
「!?」
突然微かに聞こえてきた女性の声に体がはねる。
その声は一番奥にある教室から聞こえてきているようで、何を言っているかまでは聞き取れない。
「・・・・・・・・・・・・行ってみるか」
その声に吸い寄せられるように足が動いた。
ドアの前に来ても、元々声が小さいらしくハッキリ何を喋っているのかまでは聞き取れない。
「開けてみないと分からないか」
ビビっていても仕方が無いと意を決して、思いっきりドアを開けた。
ぶわっと風が吹き荒れ一瞬顔を背けるが、すぐに顔を上げる。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
そこにいたのは見覚えのない美少女だった。
長い黒髪に前髪を揃えた賢そうな見た目。顔立ちはまだ幼さを残したまま大人びた陰もある。
口調はなんとなく敬語でお淑やかな感じかのかなとか妄想を膨らませていると、ついにその美少女が口を開いた。
「な、なんでしょうか・・・・・・ですか? 私に何か御用でございましょうか」
「・・・・・・・・・・・・?」
なんだ今のは!?
例えるならカレーに天津飯が入ってる感じだったぞ! なんか美味そうだな・・・・・・。
そんな下らない事を考えて笑いが込み上げてくるのを我慢していると。
「もうめんどくさい! 猫被るのも案外難しいものね。ーーーーそれであなたは?」
なんだコイツ・・・・・・、この人急に豹変したぞ!
訳の分からない俺はとりあえず自己紹介しておく。
「俺は符灯凪だ。好きな物はぎゅうにゅーーーー」
「いや、別に好きな物とか聞いてないけど」
くっ、すまないキラ。お前のネタは世間では通用しなかったようだ。
しかしそれ以上言うことも無いので黙っていると、美少女は何か納得したように口を開いた。
この時のセリフを俺は生涯忘れることはないだろう。
「さては凪、あんた頭悪いわね」
俺にとっては最大の侮辱をさらりと吐いた美少女は清々しい迄のドヤ顔をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます