砂の城
さらさら、さらさら、
手から零れ落ちる砂はちっとも
手にベタつかない。
夏のあの日、海辺で城を作った時はあんなにもじゃりじゃりしてたのに。
手が海水で濡れてないから?
「ううん、そうじゃないね。だって城を作る前からベタベタ、じゃりじゃりしてたもの。」
私の手はいま汗ばんでいない。
さらさらと乾いてる。
「そっか、そうだよね。いまは冬だもんね。」
あの夏の日、あんなにも暑かったのに海まで行く途中あの人とずっと手を繋いでいた。
手が汗ばむのを気にせず、繋いだ手が楽しかった。
だからかな、海についてすぐさわった砂がベタベタ、じゃりじゃりしてたのは。
夏のせいだったんだ。あれは。あの日々は。
声もでずに涙が頬を伝って零れた。
砂に小さな染みができる。
けどいまの季節は冬。
そしてきっとこの染みはすぐには乾かない。
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