白く小さな旅人
「お別れがつらいよ」
「お母さんと別れるのやだ」
そういって私の子どもは私から
離れてくれない
必死にしがみついて
周りが離そうとしても離れてくれない
次に運命がやってきたら
今度こそ離れてゆきなさい
これ以上ここにいてはだめよ
それまではこの日陰と日向のバランスが
ちょうどいいこの場所で
兄妹たちと共に時間の流れに
身をまかせましょう
だけど運命は突然やってきた
びゅうぅぅぅ~!
ひときわ強い風が吹いて
私を母さんから離そうとする
私はほかの兄妹たちみたいに
外の世界に憧れをもったりしない
物分りもよくないから
必死にしがみついた
私と同じ気持ちの妹も必死に
しがみついていた
みんなが飛ばされ離されていくなか
お母さんは微笑んでいた
これでもかと風は吹き続けた
必死にしがみついていた妹も
とうとう飛ばされてしまった
「お姉ちゃん、元気でね。」
不安だろうに笑顔を作って
私とお母さんにお別れをいって
飛んでった
風はやみ、私とお母さんが残った
私は飛ばされなかったことに安堵した
「だから言ったのに離れてゆきなさい、と」
私は後ろを振り返った
そこには私以外の綿毛が飛び散った
お母さんの姿があった
「あなたに見せたくなかったのよ」
ーこんな惨めな姿ー
何にも言えなかった
そんなことないよ、立派だったよ
そういう事もできたのに
ただお母さんにしがみついてきた
私は誰かを励ますことすら
できなかったのだ
お母さんは大地と一緒になった
私はお母さんがいたところで
咲くことにした
「妹はどうしてるかな」
どこか遠くで咲かせてるだろう
広い世界を見たあとに
日向のある私の知らない場所で
そうして私もりっぱな
たんぽぽに育った
私の子たちはみんな飛ばしてあげよう
広い広い世界を知ってもらうために
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