ひねくれたってさ
すっぱい、すっぱい。
なんてすっぱいんだ。
いやいや、このすっぱさが誇らしいんじゃないか。
生まれはこの星さ。まず土だろう。
それから鳥が運んできた種だろう。
お空から降る色んな味のする水だろう。
そして仕上げは眩しいほどに俺を照らす、あのでっかな太陽さ。
俺はひねくれてるのさ。
だからこんなにすっぱな実をつけるのさ。
ひねくれてても根っこはしょうもなく、ずっしりこの大地に根を張ってんだ。
えらく年を重ねたが俺は生かされてんのさ。
あぁ、俺という梅の木は花を咲かせ、実をつけ、知らないうちに一部になっちまったんだ。
あんたは気づいているかい?
ほら、目の前にいるあんただよ。
俺という梅の木があんたに与えるものを。
俺はもう一部なんだ。
このひろいひろい星の命の一部さ。
あぁ、すっぱい、すっぱい。
ひねくれものの俺が与えられるものを全部あげようか。
梅の花もその実も。
年を重ねすぎてしまった。
あぁ、すっぱい、すっぱい。
俺の実が梅干になって、あんたの口に入るんだろうか。
あんたはすっぱい、て思うかい。
これが俺さ。
精一杯ひねくれてんだ。
だから食べておくれ。
花を眺めておくれ。
そうやって俺は俺で役割を果たしてのさ。
好きにひねくれて、この生を謳歌してんのさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます