語り人と箱庭の世界
夢見ざくろ
金平糖の海
真っ白な綿菓子敷き詰めて君は笑ったね。
「ほうら、ここにも必要だよ。今日は風が強いから早く流れていくんだ。」
僕はお兄ちゃんだから君に教えてあげるんだ。
よいしょよいしょと幼い君は綿菓子を敷き詰める。形を整え、時には遊び心が働いて、
へんてこな形にもしてしまうけど、そんな君が僕は大好きさ。
「もう交代の時間だね、さぁ休んで。」
僕がそういうとほっぺたに綿菓子がついた顔で君はにっこりと微笑んだ。
「頑張ったね、休んでお兄ちゃんの仕事を見ててごらん。そうして早く覚えておくれ。」
うんうん、と首を大きく縦にふる。小さな小さな体でね。
君がいてくれてよかった。
寂しくないよ。僕の可愛い弟。
そうしてあっという間に夜がきた。
暗闇をたくさんの金平糖達が照らす。
「綺麗だろう?金平糖達は絶えず作られるんだ。彼らは希望なんだよ。」
みーんなにとっての希望なんだ。
君が生まれてもう何年だろう?
僕は知ってるよ。
いつか近いうちに別れが来るんだ。
それは今日かもしれないね。
前触れなんてないんだ。
だからね、僕は君にこの金平糖の海を見せるんだ。
覚えておいておくれよ。その目に焼きつけておくれよ。
「兄ちゃん、あのね。こんぺいとう、きれいだね。あまくて、ぴかぴかで小さくてかわいくて。だいすき!」
そうだろう?だって、これは君なんだ。
君は金平糖から作られた特別な綿菓子なんだよ。
たったひとりの僕の弟さ。
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