第12話 突然の来訪者
かなり焦った様子の年上の女の子──サネルに促されるままに、私達は教会の建物へと駆け足で向かった。
子供たち用の、教会のサイドに位置する扉から中を覗くと、来訪者用のメインの大きな扉から20人ほどの鎧を着た騎士のような格好の男達がなだれ込んでいて、その先頭の男2人が、神父さんとゼパールの父親に剣を突きつけていた。
「なっ、」
「何これ……」
「っ、親父っ」
まず騎士達が目に入り、2人して呆然とするが、
剣を突きつけられている父親を見た途端に駆け出そうとしたゼパールの腕を咄嗟に私は掴んだ。
「離せよっ、親父がっ 」
「でも、ゼル、」
これは流石にどう見ても出ていったらヤバい状況だろう。
そう続けようとしたが、その前にサネルがゼパールの口を塞いだ。
「今、貴方が出ていってもしょうがないでしょっ。
とりあえず、静かにしてっ。」
さすが歳上の貫禄があった。
有無を言わせず、隅に固まる孤児院の子供たちの元へゼパールの口を塞いだまま引きずり、私へと「こっちに来い」と目線で促す。
サネルは私がここに来てからの最年長で、みんなをまとめるお姉さん、という感じの、
1週間後に孤児院からの独立を迎える12歳だ。
そばかすの散った大人びた顔に、茶色の髪をお下げにした、いかにも委員長といった風貌の持ち主でもある。
子供達の元に辿り着くと、「もう分かったから離せ」
と言わんばかりに彼女の腕を叩くゼルの落ち着いた様子に、サネルはようやく口を塞いでいた手を離した。
「……すまない、取り乱した。今、どういった状況だ?」
私もゼパールと揃ってサネルを黙って見た。
「何がなんだかさっぱり分からないの。いつも通り、何人かの子供達と中で遊んでたら、急にあの男の人達がぞろぞろ入ってきて、神父様と貴族様に剣を突きつけちゃって。
何か喋っているけれど、ここからじゃ……」
「皆さん!」
サネルが私達に状況を説明する声を遮って、シスターのお姉さんが私達に声を掛けてきた。
「シスター!!」
「怖いよっ……」
「神父様たち、どうなっちゃうの??」
いつも世話してくれるお姉さんが来た途端にまだ小さな子供達が、堰を切ったように涙を目に浮かべてすがりつき始めた。
「みんな、落ち着いて頂戴。とりあえずここは危ないから、奥の離れに行きましょう。」
子供達をそう宥めたシスターは、私達を連れて、教会に付属した、別棟の離れに向かった。
ゼパールを含め、みな困惑と不安が入り交じった表情を浮かべながらもシスターについて行き、離れに辿り着く。
「お姉さんがいいと言うまで出てきてはいけませんよ」
そういってシスターは離れの部屋の扉を閉めた。
───ガチャン
……部屋の中に、空虚な鍵を閉める音が、妙に響いた。
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