第10話 やってしまった、そのに。


ちょっと決心をして戦闘をしたものの、「気絶してて見てない、みたいなことないかな~」なんて淡い期待を抱きながらチラッとゼパールを見ると、腫らした顔に驚愕の色を浮かべて、私を凝視していた。



(ですよね~~!!)



止むを得ずとはいえ、やっちまった感が拭えない。


もういいや、と思ってゼパールの元へ腰をおろして、治癒魔法をかける。



魔力を隠そうと思っても、治癒ぐらいはできといて損はないでしょ(主に自分の怪我用に)、と思って練習してたのが役に立ってよかった。他人の為っていうのが非常に不本意だけど。



治癒魔法自体は、そこまでレアでもない。ややレア、ぐらいか。

治癒魔法は聖属性で、聖属性は光属性の下位互換のようなものなので、光属性をもつ私は治癒魔法も使える。

だが、聖属性を持つ者は、ややレアでかつ、治癒以外あまり汎用性がないのもあって、必ず教会所属の治癒師となる。


12歳になったら、孤児院を出て、冒険者ギルドで小遣い稼ぎをしながら一庶民として平穏な暮らしを送る予定の私にとって治癒魔法が使えることがバレると、生涯教会に縛られっぱなし、となるのは目に見えているので、やはり隠すしかないのだ。



ま、今まさに人前で使っちゃってるんだけどね。



後でゆっくり口止めを、と思いながら、とりあえず治癒魔法まで使われて、もう目を白黒させているゼパールの手を引っ張って立たせて、表通りまで出てきて、話をするために広場のベンチまで彼を引っ張って行った。



「……お前…、棒術を扱えるのか…。それに、治癒も………」


まじまじと私の顔を見つめる視線を避けるように私は目をそっと逸らした。


実は私、棒術どころか、武器全般を扱うことができる。

これは、前世の経験によるものだ。

珍しい公立の中高一貫校である我が母校には、週2日、午後の授業の時間を使った必修クラブ活動が存在し、私はとある部に所属していた。その名も、


『様々な武器を華麗に扱いたい部』


ネーミングセンスもクソもなく、読んで字のごとく、剣術、体術を始め、棒術、槍術、弓術、挙句の果てには暗器までを華麗に扱えるようになろう、という活動内容。

幅広く、様々な武器を華麗に扱える、というのが最終到達点だ。


マニアックな友人に偶々引きずり込まれたのだが、才能があったのかなんなのか、全てを身につけてしまった私……。

前世(つまり今で言うと前前世)は武帝だったのか!?とか揶揄されてたわ。



濃ゆい記憶に思いを馳せていると、ゼパールが私の手を強く握ったことで、現実に引き戻された。




「頼む!!俺に棒術を教えてくれ!!」



「……は?」



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