参・ 又譽其矛曰 吾矛之利 於物無不陷也
今度は矛、そう矛だ。
「まだまだぁ、これだけじゃないぜぇ」
思わせぶりな話し方で一旦楯を荷車に立てかけ、今度は先端が黒い矛を右手に持つ。こいつもあの老商人から仕入れたもので、購入した際に一つの逸話を教えてもらった。ここでも同じ話をするか。
「こいつは魏の国で鍛えられた黑き矛。以前の持ち主は趙の国との戦いで一騎当千の働きをし、一人で敵の前衛を打ち破ったと謂われている。この矛に貫けぬものなく、止められるものなし。いかなる楯も貫く矛だ!」
今度は簡単に振り回しながら刃先を見せる。商人の俺では持ち上げて振り回すが精一杯で、演武など出来そうにない。この前に出会った同業者は兵隊上がりだったらしく、自分で剣捌きなどを見せるそうだ。俺もいつかそんな売り方をしてみたい。おっと話が逸れたな。
「兄ちゃん、それいくらだい?」
「それよりもさっきの楯だ。楯。もっと見せてくれ」
「矛の話ほんとうかい?すごいねぇ」
それよりも、どうやら矛も楯も好評のようだ。この町で売ることができそうで安心した。あとは値段の紹介だけか……
ここは気を張っていかなきゃな。
*
また、その矛を誉めて曰く
「わが矛の
*
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