弐・ 譽之曰 吾楯之堅 莫能陷也
道端の草が荷にかかって見えずらいので荷車を少しずらしてから店を広げる。麻布を地面に敷き、小さな武具を陳列し、大きな物は荷車に立てかけるようにして準備した。大きな戦が起きるらしいという不確かな噂を信じ、今回はいつもよりも気合を入れて仕入れたのだ。
店の用意ができてから暫くして、人が周りに少しずつ増えてきた。どうやら目玉商品の矛と楯に興味津々の様だ。よし、宣伝の一つでもするか。
「寄ってらっしゃい、観てらっしゃい。今日のお薦めを紹介するぞ~」
おっ、何人か振り向いた。いい客になりそうだ。
「まずこの楯、よく見てほしい。表面と持ち手が鉄でできていて、木製の楯に比べて圧倒的な強度を誇る。裏面は漆が塗ってあって、雨にも強い。この世にこの楯を貫けるものなし、そこらの矛なんぞ刃こぼれして折れちまうぜ!」
片手で楯を持ちながら、もう一本の手を大きく振りながら日光を反射して輝くそれを鼻息を荒くしながら説明する店主。
(ふふん、どうだ?自慢の一品だぞ)
陳の街で仕入れた品で、なんでも秦の国の名工が創り上げたらしい。らしいというのは俺が直接仕入れたのではなく陳の街にいた老商人からしいれたからだ。老商人は太鼓判を押していた、『儂が保証する』と言ってくれた。さっきの説明も老商人の受け売りだ。
老商人から仕入れたものはこれだけでは無い。
楯ときたら次は矛だ!
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