第4話 2月10日

君のかけている黒縁のメガネがもしかしたら伊達メガネなんじゃないかという考えに取り憑かれた僕は、昼間から何も手につかないでいた。

きっかけは、僕が君の目の形をよく覚えていないことだった。

確か鋭く細い目をしていた気もするし、丸い目をしていたような気もした僕は、僕が君の目を見ていなかったのだという結論にたどり着くまでに、相当の時間がかかった。

でも僕はいつも君のことを見ていたという自負があるから、君の目を見ていないということなんてありえるだろうかと悩んだ僕は、君が伊達メガネをかけていて、いつも照明や日光を反射させるので目が見られていないのではないかと考えた。

それから僕は、君がかけているメガネのことを考えている。

君は一体どれくらい前から目が悪いのだろうなどと、どうせ考えても結論の出ない考えを、まるでそれが世界の真理の一端を確かに担っていると知っているかのように考えたが、考えてもやはり結論は出ないで、もしかすると君がメガネをかけ始めたのは、小学生の頃だったかもしれない、などという結論にたどり着く。

小学生ぐらいの頃から流行っている携帯ゲーム機があったから、きっと君もそれを買ったのだろう。

日夜ゲームをやり込んだ君は、暗い部屋で横になりながらゲームをやったりして、きっと瞬く間に目が悪くなっていったはずだ。

でも君はゲームをしていただけではなく、本だったそれなりに読んでいたに違いない。

図書室の本棚の、少し上の方にある、誰も手を伸ばさないような本を手に取り、パラパラとめくり、意味がわからないことを確認すると、それでもそのわからない意味をこの本から汲み取ってみせるぞなどと、冒険家のような眼差しをしてその本を借り、じっくりと読んだはずだ。

そうでなければ、君のそのメガネは伊達メガネということになる。

君がいつも身にまとっている、周りの人達より少し値段の張るオシャレな服装の一環として、君はその黒縁メガネをかけているに違いないが、確かにそれはオシャレとしてもよく似合っていた。

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