第2話 2月8日
もう大学は春休みに入ろうとしているね、だから僕と君はもうしばらく会えないね、と僕は心の中で君の横側に座って、君の顔を覗き込むように言うのだけれど、君はなんのことやらと言う感じで「うん」と一言だけ返す。
その「うん」が聴けたら、きっと僕はおだってしまって、まともにまっすぐ歩けないんだろうと思うんだ。
けれど最後の日の大学でも君はいつもみたいに教授を見たり、手元のスマートフォンをいじったり、突っ伏して寝てみたりするので、やっぱりそんな君が好きなんだと思った。
君はまるで大学ではなくて、何か小さなパーティに出るような服をしていた。
僕は僕がまるでこれから世界のどこへだって駆け出して行けそうな服装なのが、君の濃紺の服を見ていると、とたんに恥ずかしくなる。
僕は君の姿を勝手にスマートフォンで撮影したりはしない。
君の姿がスマートフォンの中に記録され、いつでも液晶画面の中に立ち現れてくれるとしたって、僕は君が液晶画面の中だけの存在ではないと知っているから、君が現実に存在するのを分かってしまっているから、きっと見ていても虚しくなるだけなんだ。
でも君のInstagramは例外だ。
フォローして見ているわけじゃないけれど、時たま何かにとてつもなく疲れた僕は、指先がそうしなくてはならないと知っているかのようにスムースに君のInstagramへ僕を案内してくれる。
君のInstagramは、君自身が登場することこそ少ないけれど、君が撮影する空の写真や、料理の写真は、他の誰とも違って、僕はとても好きだ。
周りのみんなが青空を撮るところ、君は夕焼け空の写真をアップしている。
夕焼けのほのかに赤い空に、赤く染まりきるまいと必死な白い雲が漂う写真は、時々君が友達と写っている写真よりも、僕を励ましてくれる。
あの赤い空の中には、きっと真実があるよ。
僕も、果てしなく高い感じのする青空よりも、僕らを暖かく包み込んで、絶対的に肯定してくれるようなあの赤色の空が好きだ。
そういえば君はたまに赤色の服を着てくる。
たまにだから気がつかないけれど、君の赤色のジャケットが、僕まで包み込んでくれるような気がするんだ。
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