第11話 初魔物討伐クエスト

朝食を終え、ギルドに行くと、掲示板の前に冒険者が沢山居て、ちょうど今日のクエストが貼り出されるところだった。


「おぉ、タイミング良かったぁ〜」


正直クエストが貼り出されるまで待つのが嫌だったので、僕は内心ほっとした。


マイスさんによって掲示板に次々貼られていくクエスト用紙を、僕は目を凝らして近づきながら見る。


頭が邪魔で見えにくかったが、その中で銅帯の黒のクエストを一枚だけ見つけることが出来た。


「では今日のクエストを貼り終えました」


マイスさんの一声で冒険者たちが一斉にクエスト用紙に群がった。


「ぼ、僕も早く取らないと!」


僕も慌てて掲示板に向かった。掲示板の、左真ん中から二番目のクエスト用紙を目指して急いだ。


「どっ、どいてください……!」


僕は群がっている冒険者たちをかき分けるようにして進み、手を伸ばしてようやく目当てのクエスト用紙を取る事が出来た。


急いで群れから出る頃には少し汗ばんでしまっていた。


「はぁ……。はぁ……。毎朝こんなにしんどいのか……」


僕は乱れる呼吸をゆっくり落ち着かせつつ、手に取ったクエスト用紙をマイスさんに渡しに行った。


「マイスさん、おはようございます。このクエストをお願いします」


「あらベラ君、おはようございます。こちらの魔物討伐のクエストですね?かしこまりました。少々お待ちください」


「ちょっと怖いけど楽しみだな〜」


はじめての魔物討伐のクエストに心を踊らせる。そのワクワクが消えぬうちにマイスさんの作業が終わった。


「お待たせ致しました。申請が終了致しましたので、用紙をお返し致します」


「ありがとうございます。行ってきます」


「はい。行ってらっしゃいませ」


僕は用紙を受け取り、ギルドを出た。






今回のクエストは銅帯の黒のクエストで、初めての魔物討伐のクエストだ。場所は王都より北東にある、[ヴォルカン火山]の一階層に生息するヴォルカンラットという比較的弱い魔物だ。銅帯のクエストということで弱い魔物に設定されているのだろう。


少し遠いので食料をカバンに入れてから僕はヘクトを出て、北東へ向け歩みを進めた。







「あれ?全然疲れない……。なんか、どんどん進めれるようになってる……?」


僕は五時間ほど歩き続けたのに、まだ疲れない事に気づいた。体力が向上しているのだ。


今思い返せば僕は二回死にかけている。その中で僕は知らずうちに少しづつ成長しているのだ。


「僕でも成長できるんだなぁ」


少しの安堵感と感動を持ちながらそう呟いた時、ふとソルディのことを思い出した。


「そういえばあいつ、今どのくらいのランク帯なんだろう」


元々は僕があいつを超えたくて申し込んだ、このランク帯競争。どちらが先に青銅帯にランクアップするかというものなのだが、僕には作戦があった。


最初に受けるクエストは必ず非戦闘であること。魔物討伐のクエストより昨日僕がやった薬草採取などの非戦闘クエストの方が安全かつ速く終わらせることが出来るのだ。


二つ目に受けるクエストは、出来れば戦闘は避けたいが弱い魔物相手のクエストなら受けても良いということ。銅帯の赤のクエストともなると、魔物討伐のクエストは避けられないと思ったからだ。


そして三つ目のクエスト、すなわちクエスト達成を出来れば青銅帯にランクアップできるクエストは、誰か強い冒険者とパーティを組んで安全に魔物討伐をするということである。クエスト自体は強い冒険者が進めてくれるし、僕は後ろの方で手負いの魔物を討伐していれば安全に素材集めを行えてさらにランクアップまで出来るのだ。


自分の強さだけではソルディには勝てないが、これらの作戦を駆使すれば勝てると思ったのだ。


「絶対に競争に勝って、あいつをギャフンと言わせてやる……!!」


僕は意気込み、歩くペースを少し速めた。






それからずっと歩き続け、夜になる頃にヴォルカン火山に到着した。

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