オバケと息子(2009.10.13)

自分を動物にたとえると…、うーん何だろう、息子かな。

えっ?、単に息子がオレに似ただけじゃないかって?

違う、チガウ、それはちがうんだよ~


キー、キー、ギャー…

今日も子供部屋から、息子の吠え声が聞こえてくる。

小三になった息子はプチ反抗期。

妻の言うことを聞かず、奇声を発するようになった。

そうかと思えば、夜になったら妻にゴロニャ~ン。

オバケが怖くて、子供部屋に独りで居られないんだそうな。

まったく、どこかで拾ってきた動物のようだ。


そういえば、オレも怖がりだった。

夜はいつも、弟に子供部屋まで付いてもらっていたっけ。

あんたに似たんじゃないの、と妻は言う。

違うよ、オレがこいつに似たんだと、必死の照れ隠し。


それは昔、細い路地の街で独り暮しを始めた頃。

辛く当たる上司に、枕を濡らす日が続いた。

そいつが怖い、早く家にたどり着きたい。

そう思うだけで、夜道の怖がりはどこかへ行ってしまった。

その時、初めて気付いたんだ。

オバケが怖いのは、オバケよりも怖いものが無いということ。

これはとっても、幸せなことなんだ。


嫌だ~、怖いよ~

リビングから息子の鳴き声が聞こえる。

いい加減にしろ、とオレが吠えてみても、一向に妻の元を離れようとしない。

それは、父親の叱責よりもオバケの方がまだ怖いということ。

これもまた、幸せの形の一つかもしれない。


オレを動物にたとえると息子。

人間という殻を取り去った時、そこに現れるのは今の息子のような動物であってほしい。

オバケが怖いのが弱点だが、それは秘密だ。



<2009年10月13日投稿>

はてなダイアリー 今週のお題「自分を動物にたとえると」

(追記10/16:『週刊はてな』10月15日号で紹介されました!)

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