第二話 友人
梅雨の時期が終わりを迎え、夏が差し迫る七月の終盤。
大学ではテスト期間が始まろうとしていた。
今まで
葉月も例外なく、その中の一人であった。
閑散とする図書館に活気が戻る瞬間がテスト期間だなんて、皮肉よね。などと隣人の小言をチクチクと受けながら、泣き言を喚きつつパソコンを打ち続ける葉月。
「はぁ……どうしてこんなにレポートが出ているんだ。ふざけてるんじゃねぇぞ」
などと重たい溜息を漏らしながら口走っていると、もっと前からやっておけばよかったじゃないのね。などと皮肉とも嫌味ともとられかねない、正論が黒川桐絵の口から飛び込んでくる。
桐絵は葉月のレポートを手伝い、自分の勉強を一人でペースを乱さずに淡々とこなしている。
肩に掛かる黒髪を後ろで一つ結びにして、ゆったりとした黒字に赤い
さすが優等生は違うなぁ。
葉月はそんな事を横目で思いながら感心しつつ、桐絵も口元が緩み葉月との交友関係を楽しんでいた。
お互い素直になれなくても、ただ友人としてそばにいられればよかった。
そんな黒川桐絵の訃報が葉月の耳に飛び込んできたのは、夏休み真っ只中の八月十三日。とても暑く、葉月にとって酷く疲れ切った日のことであった。
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