〇一八

 門衛長グスタフは君に打ちのめされて呻く。


「おのれ、ただの商人じゃないな。さては、聖導教会の手の者か!?」


 僧兵たちが君たちを取り囲む。


「ち、話の分からない奴……」


 ロヴァと君は商人たちを下がらせて門番たちに武器を向ける。


 一触即発の緊張を終わらせたのは、門から現れた一人の老人であった。

 白髯を靡かせた老人は、身体こそ痩せこけて貧層だが、手にした武具は上等な一品。眼光は刃物のように鋭く、佇まいには歴戦の覇気が感じられた。


 グスタフとは役者が違う。君たちは顔を見合わせて頷き、確信する。


「何事だ、グスタフ」

「ゲ、ゲモン様、こやつらは聖導教会の手先でして……」

「臆病者め。敵と巡礼者殿の見分けもつかんとは、不心得者が」

「は、ははぁっ!」


 グスタフは片膝をついて礼の構えを取る。

 武人は君たちを一瞥すると、被り物を取ってロヴァに一礼した。その額にはロヴァの尻に現れたのと同じ、【マダラメイア】の【しるし】が浮かんでいた。


「教団を主催しております、ゲモン=アゾニクスと申す者でございます」

「おう。俺はロヴァルト=フェイクだ。しるし、見せようか?」


 ゲモンは首を横に振る。


「必要ありますまい。お連れの方々も、ひとまずは里に入られるとよい」


 ゲモンが右手を挙げると、門が重い音を立てて開かれていくのであった。


「さあ、入られよ」


 君たちにそれを断る理由は無かった。


 君たちはどうにかキャラバンと共に『幻日教団』の本拠地にして亡都への入り口、『封印の里』に足を踏み入れたのであった。


 しかし、ふとロヴァの横顔を見ると、彼の額には僅かに冷や汗が浮いていた。


【〇一九】に進みたまえ。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888453186/episodes/1177354054888479126


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る