3話 力で制す者 人脈で制す者 side:愁
【side
「な....なんだ...なんなんだよこれはあああ!!!」
目の前がグルグル廻る...具合悪い!!
何時間廻ったのだろうか...というぐらい感覚がおかしい
そして真っ白な世界から一変し、目の前には今にも崩れそうな屋敷が現れた。
いや、俺らがその前に現れたのか?
というか、気分が悪すぎて...吐きそ...
「お...おぇぇぇぇ...ぐはっ...おほっほっ」
というより、既に吐いていた
「だから言っただろ。慣れてない人間は...立つのもやっとだと」
「いや、言ってねぇだろ!むしろ言うのやめたじゃね...おぇぇえええ」
盛大に吐き散らかしてる。 情けねぇ
「まぁ外にいても意味のない。もう夜だ。 中に入ろう
手を貸すか?」
レイトリスは俺に手を差し伸べてきた
「いや、いいわ。 自分で歩く」
俺はその手を無視し、自力で歩いた
扉の前までいくと、レイトリスは俺の前まで歩き何かまた呟き始めた
「ભગવાન આવે છે, તેને ખોલો.」
(主が来たぞ 開けよ)
また呪文めいた言葉を放つと、扉がひとりでに開き始めた
「...今のは呪文か何かか?」
千鳥足になっている足でレイトリスに近づいた
「そうだな。まぁ結界のようなものだ。追われてる身だからな。
念の為に...というやつだな。」
そして家の中に入っていく...追われている?どういうことだ?
考えてると目の前にいたレイトリスがいない
というよりレイトリスの姿が見えなくなった
部屋の中を外から見ていても姿が見えない
真っ暗だが、中もボロボロなのは見えているただ肝心な姿が見えない
「...おいどこいった?...おーい」
俺は家の中に向け声をあげた
「何をしている?早く入って来い。」
何処からかレイトリスの声が聞こえてくる
何処だ?周りをキョロキョロしていると...
「....う..うわっ!?はぁ!?首だけ!?」
姿が何もなかった家の中からレイトリスの首だけがヒョコっと出てきた
「だから結界のようなものだって言っただろ。早く来い!」
首だけ出ていたところから次は左手も出てきて、俺を家の中に連れ込んだ
俺らが部屋の中に入ると扉が自動的に閉まり、明かりがついた
「な...なんだこれ!?すげぇな...」
俺は目の前の光景を見て唖然としていた
そこには...城の中にありそうな正面限界に左右にわかれている階段
騎士の銅像が左右に五体ずつ並んでいる
...これが異世界かよ。
「ここは私が設計した、部屋だ。まぁ
レイトリスはそういうと右側の階段に進んでいった
「はよ。来んか。飯にするぞ。 その前にお前に部屋を用意している
そこの犬についていけ」
レイトリスは横目で俺に指示をしながらそのまま歩き進めた
「...犬?何処に...」
俺は周りを見渡した
でも犬なんて...
「...こちらで御座います。お客様。」
後ろから声が聞こえ振り返ると
そこには人?犬?どちらとも言えない人種がたっていた
俺よりは背が高く執事服を着ている人物?がいた
「...ほへ?...って....えぇぇぇ!?!?」
この世界が異世界というのはわかっているつもりだが
一回一回本当に驚かされている
「私はこの屋敷の執事をしております。ワンです。」
ありきたりな名前だな。おい。どこから突っ込んでいいんだか...
「...といっても、この屋敷のみでしか存在できない魔法人形なんですがね。」
この屋敷の中?どういうことだ?まぁ後で聞くか
「それより、お客様の部屋はこちらになります。着いてきて下さい」
ワンと名乗る人物に黙って着いていき
レイトリスとは真逆の左側の階段を歩いていった
というか、この屋敷外から見たらただのボロ屋敷なのに中に入ると広いな
しかも新品のようにピッカピカに床が光っている
壁なんて大理石のような石で槍や矢なんて通りそうにもない
掃除も大変そうだな そんなことを考えていたら到着した
「こちらがお客様の自室で御座います。
レイトリス様からは自由に使ってよいと承っております。」
そういうとワンは扉を開け、部屋の中を案内してくれた
「こちらがクローゼットになっております。好きな服を着てください。」
目の前のクローゼットの中には、紳士的な服しか入っていない
「...俺には合わないな...当分この服でもいいか?」
流石にこっちの世界に着てまで息苦しい服を着たくはないなぁ
「それは私が決めることでは御座いません。主様とお話し下さいませ。」
面倒くさいと思いながら、ベッドに腰掛けた
「そういえばこちらの世界のことをあまり説明されていなんだけど
魔法とかって属性とかあるのか?」
「そうですね。この世界の魔法は...」
そういうとワンは部屋の扉を閉めた後説明してくれた
この世界の魔法について この世界の種族について
魔法は基本的には四属性で特殊属性を合わせると六属性
俺はどんな魔法が使えるんだろう?気になる
種族は基本人族が少なくなり
亜人と呼ばれる種族の方が世界の人口をほとんど占めているらしい
獣人、エルフ、ドワーフ、
それと比例してモンスターの種類も多いとか
ゴブリン、リザードマン、インセクト、悪魔
これらは総じて魔族と呼ばれているらしい
しかもモンスターには上位互換があり
基本三段階に変異するらしい
ゴブリン→ボブゴブリン、ロードゴブリンのように
亜人にも王族、皇族、平民など呼び方はそれぞれらしい
「ってことは、レイトリスはロードエルフということは王族なのか?」
亜人の王族はロードが名称の頭につくらしい
「そうです。主様はロードエルフの最後の生き残りで御座います。」
「最後って事は家族は...」
「ご想像通りで御座います。現在レイトリス様は...」
ワンが説明しようとしたら、部屋の扉が開いた
「何を油売っておる。飯の時間じゃ。はよ来んかい。」
ドカドカと部屋に入ってきては
俺の右腕を強引に引っ張り部屋の外に連れ出した
「それでは頂くことにしよう。」
部屋を出た後長い廊下を渡り階段を降り反対側の階段に進んだ
長い廊下には各部屋に繋がる扉が左右にあった
その一番奥の扉を開くと長いテーブルと多くの椅子があった
「そうだな。...いただきます。」
俺は手前にあった肉を葉っぱで包んである料理をフォークで刺した
「愁よ。もう少し上品に食えんのか
まぁ良い。 そういえばワンと何の話をしていた?」
俺はここ数日何も食べていないことを思い出し肉を食らっていた
「心優しい主様が俺を召喚したのに、この世界について
何も説明ないから細かく聞いていたんだよ。
魔法や亜人、それにモンスターや種族について」
俺は飲み物で口の中のものを流した
「...そうか。なら説明は不要だな。
魔法については何が扱えるか気になってるだろ?」
レイトリスはサラダを食べ、赤ワインのようなもので喉を流した
「...んーそうだなぁ。奈那を探す上では物理攻撃だけだと不安だしな。
見てる限り魔法ってやっぱ便利だもんな。使ってみたいという気持ちはある」
俺は膝の上にメイドに敷かれた布で口の周りを拭いた
「そう言うと思ったわ。ワン アレを持ってきてくれ。」
レイトリスが命令した瞬間ワンは一礼し部屋を出た
「何かくれるのか?」
俺は目をキラキラ光らせながらレイトリスを見た
「そう慌てるでない。あげるつもりもないがな。
なに、愁の魔法適正を目視できる物があるから持ってこさせるだけだ」
「やっぱそんなものあるんだな。」
漫画とかアニメでよく見たことあるな
異能力など使うときに使う紙切れとか水晶とか
「主様。持ってきました。どうぞ」
ワンは一礼した後に木箱を渡した
「よし、愁よ。ここだと使えないからの
場所を移すとしよう。腹は膨れたか?」
レイトリスはグラスに入ってた残りのワインを飲み干し立ち上がった
「しょうだ...な ムシャムシャ あらかた...ちゃべ...終わる」
租借音を出しながらレイトリスの方を向かずテーブルにあった飯を食べ終えた
「汚いの...本当に礼儀がなっておらん。
これもみっちり教えんといけんな。」
呆れ顔でレイトリスが扉の方に歩き始めた
「着いて来い。地下に行くぞ」
言われるがまま俺は着いていった
この屋敷は広すぎる...迷子になっても仕方ないぐらいに
色々な部屋の場所を説明受けながらようやく目的地まで辿り着いた
「では、愁よ中に入って来い。」
先に部屋の中に入り準備があるから外で少々待てと言われ5分程たった
中からレイトリスの声が聞こえ扉を開けた
そこには...
「なーーーーんだこれ!うぉおおおお!すんげぇぇ本の数!」
無数に広がる本があった
「これらは世界のありとあらゆる情報を我が父とその家来が集めた書物だ」
すると中央あたりまで連れてかれた
中央には丸い陣があり、中心に成人女性と同じくらいの高さの台があった
「なんだこれ。これがいってたやつか?」
「そうだの。魔法適正を図るためには、私の屋敷だとこれぐらいしかないのじゃ
普通であればもっと楽に確認できるものがあるのだが、如何せん私はここ数十年
街はおろか村にすら出向いてないからの。追われる身は辛いの。」
話しながら中心のところに行き、木箱を開けた
「...色々大変なんだな。 ん?本?」
その中からは真っ白な本が一冊出てきた
「そうだ。
これはお主が魔法を流したらその適正にあったページに飛ぶようになってる
こちらに来い。遠くて声を張るのが疲れる」
「お、おう。わかった。」
俺は言われるがままに中央の陣の中に入っていった
「では、その本に触れろ」
閉じている本に上から手のひらを置いた
「どうすればいいんだ?何も起こらないぞ?」
「だから、焦るな。説明する
まず魔法をイメージしろ 魔法というのは自分の身体の中に眠る秘めたる力だ
自分の中でこれが自分の魔法だ!と思い、イメージを膨らますのだ。
例えるなら、火なら自分の周りに炎纏わせるイメージ
水なら水を纏わせるイメージだ。 それでは目を瞑って想像せい」
「よくわからないけど、とりあえず火を想像してみるわ」
説明通り自分の周りに火を纏わせるイメージを作ってみる
「......。」
「......。」
何も起こらない。
「なんだこれ?火は俺の適正じゃないってことか?」
「そういうことみたいだの。他にも挑戦し続けてみ」
言われるがままに想像してみる
水
何も起こらない
風
何も起こらない
土
何も起こらない
「.....なんで四属性全部何も起こらないんだよ!
これ本当に使えるのか!?壊れてないか!?」
俺は何も起こらないことにその場で地団駄を踏んだ
「そ、そんなことない!魔法陣だって問題ない!その本だって問題ない!
...まさかお主魔法適正ないのか?」
「そんなことあるのかよ。」
「...ここの書物を見る限り世界に今まで歴史上で一人しかおらん
ただそいつは...」
「な、なんだよ。その真剣な顔は」
俺は考えているレイトリスの方を向き冷や汗が出ている
何だよ。何があるんだよ。
「魔法適正が無い事に研究材料にされ拷問を受け続けた
その腹いせで悪魔と契約し王国を破滅へと追いやったんだ。
しかも人族のただの平民がな」
俺は一気に寒気がした
ただ、俺が同じ目に遭うなんて...
「まぁ絶対無いと思うが、最後に光と闇属性を想像してみ
光は必ず無いと思うが、闇は稀におるからの
まぁ人族で持っておる輩は魔女族の英雄王ぐらいだけどな
基本は亜人族が使えるからの」
「英雄王ってなんだよ...
んーもうどうでいもいい!やけくそだ!光も闇もどっちも想像してやる!」
俺は左側を光で右側を闇で想像した
「そんな無茶をしたところで、何もかわらな...なぬ!?」
レイトリスの驚いた声が聞こえ、目を開けた
そこには台の宙を浮く本があり、何ページにも渡ってひとりでに開いている
「...な...本が動いてる!できたぞ!おい!!」
俺は歓喜のあまりレイトリスの方を向き、ピョンピョン跳ねた
「...有り得ぬ。そ...そんなことは...」
口が閉じないぐらいに驚いている
なんだ?そんなすごい事なのか?いや、まぁ説明通りだと
光属性は神の加護や慈愛が無いか魔女族でないといけない
闇属性は産まれ持った才能か悪魔に魂を売らないといけないとか
え?...ってことは...
俺すごいんじゃね?
「...なんだ。お主は何者なんだ。」
「そんなこと言われても...俺もさっぱり」
「...本当に本当に異世界の人間は桁が違いすぎる。
ま、まぁ良い。では、本を覗かせて貰うぞ」
「...ど、どうだ?光と闇...どっちだ?」
本を覗くレイトリスに問いかけてみた
「...っちもだ。」
声が小さく聞こえない
「...ふぁ?なんて?」
「どっちもだ!!!有り得ぬ!本当に有り得ぬ!
これは...新しい...いや一度だけ...一度だけ書物で見たことがある
御伽噺だとてっきり思っていた...本当に実在するとは」
レイトリスは本を手に取りじっくりとその本を眺め
俺のほうを向きなおした
「え...どっちも?...そんなことあるの?人族で。
ただの人族が二属性も?」
「そうだな。いやそうではない 厳密にいうとだ。
二属性であり、二属性ではない。」
「なんだよ。もったいぶって。早く説明してくれよ」
俺は新しいゲームを貰った小学生のようにはしゃいでいた
「...お主の属性は...。」
ゴクリ
俺の唾を飲む音が聞こえた
「...混沌だ。 混沌属だ。
光でもあり、闇でもある。」
俺は口をあけながらジャンプした
「っしゃああああ!!!
ってことは俺回復もできながら強力な魔法も使えるってことだよな!?」
ただレイトリスは驚きの後悲しい顔をした
「いや、そうではない。
どちらも使えないのだ。」
俺ははしゃいでいた刹那に聞こえた言葉が幻聴だと思い聞き直した
「へ?...今なんて?」
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