2話 見える真実と見えざる真実 side:奈那

【side 古美長 奈那こみなが なな

「もう...何なのこれ!!!!」

 私は意味が分からない状態で地団駄を踏んだ。


 もう色々と情報が多くなり、頭が混乱している。

 地団駄を踏んだ自分が情けない...トホホ


 そして今は時間も時間ということで、

 メインフロアから食卓のある部屋に全員で移動した。

 食卓のテーブルも長い長方形の銀でできているし、高価そうだ...。

 というか...


「....ひ...広すぎぃぃぃぃ!?!?」


 ここまで来るまでの廊下や階段もそうだけど、なにこの城...。

 規模間おしすぎる。

 本当にここまで大きいと迷子になるよ!


「おかしいでしょおおおおおおおおおお!?!?!?」


 思わず声が出てしまい、叫んでしまった。

 食事の場で...子供っぽくて自分に涙が出る。

 ただ、小さい頃に映画で見た城に似ている事から少し嬉くも思っていた。


「姫。今は食事を楽しみましょう。

 急な展開でお気持ちが整理しないのもわかります。

 それに今の姫のお気持ちもお察し致します。」


 クリスさんという好青年の人がナイフでお肉を切りながらフォローしてくれた。

 見た目もかっこよくて、フォローもできて、体つきも良い。

 どんだけよ...愁も見習ってほしいは...。


 私達は、今銀のテーブルを囲うように座っている。

 中央は何故か私で、私から見て右側に好青年とおじさんと獅子がいる。

 そして、その反対に紫色の髪の女性と修道女っぽい人が座っている。


「まぁまぁ嬢ちゃんも異国からきたばかりで

 色々と目新しいものばかりじゃからの。」


 小さなおじさんが一番奥の席に座りその隣にいるクリスさんに話した。

 そして木のジョッキに入ってる泡立っているお酒を飲みながら、

 ガハガハと笑っていた。


 すごい陽気な人なんだなぁと私もお肉を食べながら思った。


「ところで、姫様?まだ私たちの事なーんもわからないのに

 よく、引き受けてくれたわね?

 危なっかしいわよ?更に言うと何があるかわからないわよ?」


 クリスさんの前に座っている紫色の女性が割ってきた。

 確か、サラさんだっけ?

 その方私の方を見ながら、赤ワイン?のような飲み物を回しながら

 匂いを嗅ぎながら、問いただしてきた。

 え...ソムリエかなんかなの?

 所々ここの人達には突込みが追いつかない。


「ん...そうですよね。

 ただみなさん良い人そうですし。別に良いかな~って

 ...アハハハハ」


 私は乾いた顔で顔を引きずりながら答えた。

 だってそうするしか今ないんでしょ!?

 だったら迷ってる暇ないじゃん!

 ただ...この世界のこともっと知りたいんだけどなぁ。


 私が途方に暮れながらそう思っていたら修道女の方が口を開いた。


「見ず知らずの人間を信用するのは素晴らしい事です。

 ただ、奈那様。世の中に貴方を騙したり貴方に対して嘘をつく

 人間が腐る程います。

 そんな甘い考えだと今後苦労しますよ?」


 物凄くタイムリーな事を言われ、胸が痛くなった。

 そして愁のことを思い出して、少々腹が立った。


 わかってるよ...そんなこと...愁に散々...一番好きだった人に...

 あぁ~もう!ムシャクシャする!!!


 私は自分の頭をクシャクシャにした


「そ...そんな怒んないでよ。ホラ!ネイルも謝って!!」


 あ、修道女っぽい人はネイルさんって言うんだ。

 続々に面々と名前がわかり、何かに書きたいと思う今日この頃。


「奈那様の気に触れてしまったのであれば、申し訳ございませんでした。

 ただ、私は今のままだと損をすると思ったので...口が過ぎました。」


 ネイルさんは椅子から立ち上がり、律儀に私に一礼してきた。

 そして私は申し訳なく思い立ち上がってネイルさんの方へ声をかけた。


「え...あ...そんな!頭上げてください!違うんです!

 元々付き合ってた男性がいて、その人が物凄くクズだったので

 その人の事を思い出してしまって...

 私がいなくても、ご飯食べれてるのかなだったり

 しっかりと就活してるのかなとか

 しっかりお風呂入れてるかなとか

 ゲームばっかじゃないかなとか...」


 思い出せば思い出す程、腹が立ってきた。

 頭をまたクシャクシャにして色々思った事を話してしまった。

 すると不思議そうな顔でネイルさんが私に話してきた。


「シューカツというものや、ゲームというものは存じ上げませんが

 そのような愚か者であっても、奈那様は思っているのですね。

 素晴らしい。聖女に相応しいですね。」


 その後不思議そうな顔の後にニッコリとした笑みを私に零した。


「いや。そ...それは!」


 そんなたいした人間じゃないですと伝えたかったと

 私がネイルさんに反論しようとしたとこにサラさんが口を開いた。


「だったら、こうしよう!うん。自己紹介!みんなまだでしょ?」


 皆の顔を伺うように全員にアイコンタクトを送っている。

 すごい気遣いだなぁ...私はテンパりすぎてる...一度冷静にならないと...

 キャバ嬢失格だ...

 っかてもう仕事しなくていいってことかな?

 それは嬉しいね!


「そうじゃな!だったら儂から話していくか!」


 そうして、小さなおじさんの...えっと

 確かアーロックさんだっけ?

 そのおじさんがテーブルの端にある席を立ち、

 ジョッキを片手に持ち胸いっぱいに語り始めた。

 私はアーロックさんが席を立った直後に自分の席に座った。


「儂の名は、アーロック・アドルフ!こう見えて89歳じゃ!!ガハハハ!

 種族はドワーフ!ドワーフ族の代表として

 嬢ちゃんを守る5人の英雄王の一人に選ばれたんじゃ!

 得意魔法は火と土魔法!職業は創造家イマジネイター

 創造したり武具や防具を治すのが得意な鍛冶師と思ってくれい!」


 グビっと一気にジョッキの中を飲み干し座り始めた。

 分からない単語が多すぎて戸惑っていたが、一つだけ聞いたことある。

 ...ドワーフ?聞いたことあるなぁ。

 愁が言ってたっけ。

 そんなことを思いながらご飯を進めていた。


「ほぉ?アーロックは創造家の職だったのですね。それで英雄王は珍しい」


 クリスさんがアーロックさんに方を向き、

 自分の白ワイン?のようなものが入ってるグラスを口に運んだ。


「創造家?...なんですか?それわ?」


 私は単語一つ一つ覚えるのに必死な小学生みたい。

 ただ、聞かないとわからないからアーロックさんに聞いた。


「そうか。嬢ちゃんこの世界の知識なーんもないもんな。

 創造家っちゅーのは、冒険者が使う武具や防具を生成したり

 家や仮説住居や井戸等生活に欠かせない物を魔法で産み出す職業じゃよ」


 思ったより、日常で使われる魔法なんだ!

 結構重要じゃん!

 ていうか人を傷つける以外にもあるんだなぁと思った。


「そ...そうなんですね!?それって結構生活に必需品じゃないですか!」


 その言葉の後、アーロックさんが驚いた顔をした後に笑顔になった。


「そんな驚いてくれて嬉しいわい。基本戦闘向きじゃないからのぉ

 白い眼でみられるんじゃよ!ガハハハハ」


 そうなんだ...戦闘向き不向きでそんな対応されるのは...嫌だな。

 戦闘向き不向きで差別がされるのって、なんか会社みたいだね。

 差別がある人種通し仲良くするっていうのも大変だよね...。

 そういう世界は変えたいな。

 そんなことを思っていた時、アーロックさんが席に座った。


 その後隣にいたクリスさんが席を立った。


「それでは、水を差してしまった私が続いて自己紹介致しましょう。

 私の名前はクリス・レースティア。年は341歳

 誇り高きロードエルフの末裔ハイエルフの代表として、

 アーロック共々姫を守る英雄王の一人です。」


 へぇ...エルフって色々種族いるんだぁ

 ってエルフも聞いたことあるなぁ!

 あ...愁が言ってたんだった。


 というか...え?


「って...えええ?!341歳!?!?嘘でしょ!?」


 私は驚いて目が点になりながら、その場でまた立ってしまった。


「いえ、姫。

 エルフはどの種族も長命なので普通です。

 むしろ私のハイエルフという種族の中では私は若い方です。」


 341歳で若い方って...長ければ何歳なのよ...。

 私はびっくりし腰が抜けそうになった。


「ようやくここが異世界って感じしてきたわ...」


 そして私はぐだっと椅子の背もたれに腰を落とした。

 クリスさんが更に自己紹介を続けた。


「では、続いて。 私の得意魔法は風と水と火です。

 職業は魔法狩人マジックハンターです。 奇襲、正面戦闘、後衛、前衛

 全てこなす、攻撃特化型のオールラウンダーとなっております。」


 イケメンの上でフォローもできるのに、戦闘のプロなんて...。

 普通の女の子なら惚れるなぁ。

 ただ、私ただのキャバ嬢だしなぁ。

 そういう完璧な男性には惹かれない...

 むしろそういう人が基本お客様だったしなぁ。

 なぁんかまだ感覚が抜け切れないな。


 そんなことを思っているとサラさんが口を開いた。


「魔法狩人も珍しいはね。

 エルフの中でもなれる人は数少ないって良く言うわよね。

 じゃ、次は私ね!

 私はサラリア・ナジョルカって言うわ!

 皆からはサラって言われてるわよ!!

 年齢は勿論ひ・み・つ♪」


 クリスさんが席に座った後向かいに座っていたサラさんが

 勢いよく立ち上がった。

 というか、ようやく一番今の自己紹介の中でまともの人が来たと感じた。


 サラさんの年齢は秘密ね!女の子あるあるね。

 ようやく普通の人がきた!

 そう思い、私はサラさんに聞いた。 


「サラさんは見た目の通り、魔法使いなんですか?」


 私はキラキラした目で聞いてみた。

 流石に魔法使いは気になるもん!

 ハ○ー・ポッター的なヤツでしょ!?

 昔に小さいときアニメで魔法使いがいてそのおもちゃ買ってもらったっけ。


 そんな風に昔を思い出しながらサラさんを見たら、続け様に話した。


「んーそうねぇ。ちょ~っと違うかな?一応職業は魔法使いウィッチだけどぉ

 正式には魔女ドロシーかな?」


 魔女?あぁーまじょってことかな!?

 私はその言葉の意味を未だ理解していなかった。

 そして烏滸がましいまま、言葉を続けた。


「魔女って...魔女ですか?!かっこいいじゃないですか!」


 私が舞い上がっている中、場の雰囲気が一気に凍りついた。

 さっきまで皆でワイワイしていたのが嘘みたいに。

 皆の目線が一気に下やそっぽ向いたりと落ち着かない空気になった。


「...あれ??なんかみんな静かじゃないですか?」


 私は空気を壊しちゃったかと思い、縮むように飲み物を口に運んだ。

 するとネイルさんが口を静寂を破った。


「奈那様は知らなくても宜しいことでs...」


 静寂を破ったネイルさんが何か言おうとした瞬間サラさんが遮った。

 あまりの静けさに我慢できなかった表情をしながら。


「ん、別にいいんじゃない?私はなーんも思ってないもん!

 寧ろ私は嬉しいわよ?こんな目がキラキラしてるんだもん!

 昔の人達がただバカだったってことでしょ?魔女族も基本気にしてないわよ?」


 ネイルさんの肩をパンと勢いよく叩き、陽気に笑っている。

 よかったぁ。地雷踏んでなかったみたい。


「だけど...それじゃ...」


 あれ?やっぱり私地雷踏んだ?

 え、どうしよう

 サラさんの陽気な笑顔に釣られた私も笑っていたら

 ネイルさんが俯いたまま呟いた。


「大丈夫よ!じゃ説明するわね?

 魔女族は基本...奴隷なのよ。」


 私の顔から笑みが除々に消えた。

 周りが静かになった理由がそこでわかった。


「...奴隷?...奴隷って...あの...奴隷ですか?」


 私はどぎまぎしながら、サラさんに追い討ちを掛けるように聞いてしまった。


「んーそうね。どの奴隷かわからないけど、あらかた想像通りじゃないかしら?

 性奴隷として使う輩や魔力供給に使われる奴隷や盗みをさせられる奴隷等

 使い道は色々じゃないかなぁ?

 まぁ私は違うけど!」


 またサラさんは笑顔を私に向け振舞ってくれた。

 まるで元気出してと言っているかのように、向日葵のように明るい笑顔を。


「え..あ...なんか...ごめんなさい。」


 私はどうしていいかわからず、謝ってしまった。

 本来謝ってその後空気を変えるべきだろうけど

 どうしていいかわからなくなった。


「ん?気にしてないよ?大丈夫だって!

 まぁ魔女族が奴隷になった経緯はまた今度ね♪」


 そう言いながらサラさんは私に

 ウィンクをして場の雰囲気を上げようとしてくれた。


「んもぉ!誰も死んでないんだから!はい!!」


 サラさんがそういうとパン!!と自分の両手の手の平を叩いた。

 すると、一気に重たい空気がなかったかのように

 みんなまたご飯を食べ始めた。


「えぇ..っと...え?!気変わりはやっっっ!」


 私はさっきのことが無かったかのように、変わった皆を見て驚愕した。

 その時私に向かいながら小声でサラさんが囁いた。


「...シー!貴方にかからないのはわかっているのよ。これは魔法

 時空魔法で、記憶は変えてないけど、気分を少し前に戻しただけよ?」


 右手の人差し指をたて、口に近づけウィンクを私にしてきた。

 本当に魔法って便利って思っちゃう。


「っと、話が逸れちゃったわね。得意魔法は光と闇と時空魔法よ!

 勿論あんた達と同じく、魔女族代表で英雄王の一人よ!」


 サラさんはそのまま席に座って飲み物に口をつけた。

 私はその時申し訳ない顔をしていたが、サラさんが気にしないでと

 口パクで教えてくれた。

 本当に良い人で、私は救われた気分になった。


「サラリアさんは時空魔法も使うのですね。これまた珍しい。

 ...闇魔法まで。凄いですね。」


 クリスさんが白ワインを嗜みながらサラさんの方を見ていた。

 そして私は魔法が多く存在していることに驚いた。


「...魔法ってそんな種類あるんですねぇ...」


 するとネイルさんがグラスを持っていた左手からグラスをテーブルへ置いた。

 そして、空いた左手の人差し指で宙に何か書き始めた。

 その後左手の人差し指に青白い光が宿り、説明してくれた。


「そうですね。魔法は世界に6つの属性が存在します。」


 ネイルさんがテーブルの宙に魔法の構図みたいな半透明の図式を描いてくれた。

 それをスマホをいじるように、指でなぞりながらいじっていた。


「それぞれの魔法を使う為にはその属性に属さないといけないんです。」


 一つ一つ丁寧になぞりながら、説明してくれた。

 するとその構図の後ろからサラさんの顔がこちらへ向いて口を開いた。


「まぁ魔法適正っていうんだけどー。

 基本産まれた時にほとんど決まっているらしいわよ?」


 私は分からず首を傾げた。

 ほとんどってどういうこと?後々に開花する可能性も...

 んーそれとも何か条件があったりするのかな?


「サラが仰った通り、基本的には魔法適正というのは産まれ持った才力です。

 ただ、稀に突如魔法適正を受け継ぐ時もあります。

 理由は未だ不明ですが...」


 ネイルさんがこれまた丁寧に説明してくれた。

 そのまま今回は問題ないと思い質問した。


「因みに属性は何があるんですか?」


 図式をタッチし、再度ネイルさんが説明してくれた。


「一般的なのが、四属性と言われている 火、水、風、土

 それと特殊な属性の光と闇です。」


 色で分かりやすく、四属性と特殊属性の説明をしてくれた。

 本当にわかりやすくて、助かるぅ


「あ、そうなんですね。てっきり氷とか雷があるかと...。」


 私はよくあるアニメとかゲームのようだと思っていた。

 やっぱり現実はそういうことじゃないんだな。

 って思いながら残っていたお肉を食べた。


 てか皆食べるのはや!と思った。

 するとアーロックさんがジョッキに再度お酒を注ぎ私の方を向いた。


「嬢ちゃんいいところに目をつけたのぉ。

 本来は属性として存在しないが【創る】ことはできるんじゃ

 属性融合といってな。氷は、水と風の属性で 雷は、火と水と闇じゃ」


 ネイルさんが描いていた構図に自分の右指を指し

 わかりやすく説明してくれた。


 融合なんてするんだ。

 ただ、難しそうだなぁ。


 そしてサラさんが自慢気に私に向かって言ってきた。


「因みに私の時空魔法は、光魔法と闇魔法の応用ね!

 だから基本魔法属性に部類はされないんだけど、使える人中々いないからね!」


 特別な難しい魔法をサラさんは使っているんだ。

 ん?ということは魔法って使えるの制限ってないのかな?

 皆からしたら、素朴な疑問だけど私にとっては少しでも理解したい。

 そんな気持ちからネイルさんに質問した。


「あ、ていうことは、何種類も属性を持つ事ができるんですね!?」


 するとネイルさんではなく、クリスさんがわかりやすく質問を返してくれた。


「姫。そういうことではありません。

 種族によって持てる属性が何故か違うのです。

 私らでわかりやすく説明すると

 エルフは三属性 ドワーフは二属性 獣人も二属性

 人族は一属性 魔女も一属性

 だからこそ、属性融合というのが存在するのです。

 勿論魔法の属性によって、どの属性が弱点等もあります。


 例えば、火は水に弱いですよね?」


 クリスさんが自分の左の指先から火を出し、

 反対の右手に持ってるグラスの中にいれた。

 シュッという淡い音と共に火は消えた。


「このように、物理の法則には魔法でも逆らうことはできません。

 火は水に弱く

 水は風に弱く

 風は土に弱い。

 そして、光と闇は交わることの無く、お互いが弱点。」


 クリスさんはグラスの中に入ってるお酒を飲み干し、テーブルに静かに置いた。


 だけどそれだとサラさんの属性が二つ...?

 魔女族は人族同様に二つのハズだよね?


 私は気になりサラさんの方を向き聞いた。


「あれ、サラさんはでも...2つ属性ありますよね?」


 すると冷や汗を流しながら、サラさんが答えた。


「そうね。私は訳ありだからね!特別枠よ!特別!」


 皆さん色々と抱えてるんだなぁ...

 私だけじゃないみたい。

 そのことが知れただけで少し胸がキュっと絞まった。


「ただ、稀にその属性数を超える者が現れるんじゃ」


 アーロックさんが私のほうを向きジョッキを置いた。


「...それが貴方様女神様のご加護を授かった奈那様です。」


 ネイルさんが私の方を向き、優しい声で呟いた。

 というか私ってそんなチート級なの!?

 ってか聖女って、何!?

 重要なこと聞けてない気がする...。

 この世界で私は一体何者なの!?

 そんなことより今は順番通り話しを聞こう。


 そう思い、気になったことを聞いた。


「え...で...でも!五属性ってことは残り一つは?」


 アーロックさんが驚いた目で私の方を見ている。

 また変なこと言っちゃったかな...?


「嬢ちゃん。本当に呑み込みが早いんじゃな。ビックリじゃわ」


 驚いた顔でまた笑いながらお酒を飲んでいくアーロックさん。

 そしてサラさんが口を開いた。


「そうね。後1属性は基本誰も持つ事ができないの。」


 サラさんが何故か悲しそうな顔で私に笑顔で答えてくれる。


「ど...どういうことですか?」


 私は烏滸がましいのを承知の上で、情報がほしく

 グイグイ聞いている。


 失礼じゃないかな?

 そんなことを考えていたらネイルさんが答えてくれた。


「基本的には、火・水・風・土・闇魔法は産まれ持った才で決まります。

 闇魔法は悪魔と契約すれば、後程持つ事はできますが...オススメはしません。」


 悪魔と契約って...あの悪魔のこと?

 それってかなり、危ないんじゃ...。


「そうです。

 そして残った光魔法...こちらは持てる人が限られてるのです。」


 クリスさんが私の方を向き話した後

 サラさんの方を向きながら話を続けた。


「神のご加護が神からの慈愛を受けている者と...」


 クリスさんが説明している時にサラさんが寂しい声で割り込んだ。


「神からも悪魔からも忌み嫌われた魔女族のみに与えられた魔法なの。

 まぁ私たちに関しては過去の遺物のようなものだけどね。

 魔女族は唯一一般的に光魔法が使える種族。

 だからこそ、奴隷にもされ回復魔法を常に要求される事もあるしね。」


 なんだかんだいってサラさんが悲しそうな顔をしているのがわかる。

 苦しいよね。

 自分も同じ立場なら苦しいと思う。

 だけどサラさんって強いんだなと思った。


 中々感情を他人の前で言わない私なのに

 気がついたら、言葉が先に出ていた。


「ただ...ただ!サラさんは優しいじゃないですか。

 自分たちの呪いをしっかりと受け止めて...向かい合ってる

 すごいですよ。 私はそんな制度や世界を嫌いです。」


 少し笑みを零しながら、ネイルさんとサラさんが私を見ている。


「奈那様...本当にいい子ですね。

 そのまっすぐな目と気持ちはいつまでも忘れないで下さい。」


 こんな辛気臭い空間だと酒が不味くなると豪語し

 場の雰囲気を立て直そうとアーロックさんが口を開いた。


「さっ残り二人じゃ。

 さっさと終わらせて今日は寝ようぞ!

 流石に三日三晩寝てないのはキツイ!

 しかも明日は嬢ちゃんの訓練があるからの!」


 三日三晩!?

 そんな起きてるの!?魔族と戦っていたのかな...


「え!?皆さんそんなに起きてるんですか...何でですか?」


 私は申し訳なくなり、再度縮こまった。

 するとそれを見ていたネイルさんが教えてくれた。


「奈那様を召還する為の時間です。

 それぐらいの時間を使わないと召還できませんでしたので。」


 フォローするかのように笑って話してくれた。

 その後アーロックさんが割り込んできた。


「そうじゃ!じゃけど、儂らは急遽集まって初対面で召還儀式を行ったもんで

 お互いのことなんてこれーっぽちも知らんかったんじゃ!」


 あ、だから皆さん初めましてみたいな挨拶になってるんだ。

 するといきなり今まで話してなかった野太い声の人が口を開いた。


「そうだな 時間が惜しい それじゃあ 俺が 話す。

 俺の名は レオナルド

 皆からは レオ と言われてる。」


 獅子顔の人がぎこちない口調でしゃべり始めた。

 ...と思ったら後ろから甲高い声が聞こえた。

 するとヒョコっとレオさんの後ろから細い何かが出てきた。


「それとな!俺っちはジャランバイア!やっと起きたぜぇ

 レオ!実体化したら俺寝るっていったのによぉ!!!まったく」


 すごい陽気な蛇が出てきた...え...ちょ...蛇!?

 私は驚きそのままレオさんの席まで歩いていった。


「蛇....可愛い!!!」


 私は無我夢中で、蛇に抱きつきに行った。

 何を隠そう私は無類の爬虫類好きである。


「え...うぉ!?姫はこういうのが好きなんか!?

 俺っち嬉しいぜぇ!」


 ジャランバイアさんが嬉しそうに喜んでる。

 私も喜んでる!

 だってこんなとこでこんな黒くて細長い蛇に

 出会えると思わなかったんだもん!


「ジャラン 調子 乗るな」


 レオさんがジャランの首を指で掴んだ。


「いって!なにすんだよ!

 いいだろうぅ!それよりレオ。

 自己紹介は俺っちがするからよ!

 飯くっといてくれ。

 見ての通り俺っちらは獣人族だが、ちぃーっとばかり複雑でな。

 人族と獣人族のキメラ種ってんだ。

 それが俺っちとレオってことだ。」


「キメラ...種?」


 私はジャランに頬ずりしながら首をかしげた。

 するとクリスさんが答えてくれた。


「キメラ。 大昔に存在したと言われている錬金術師が創った

 人体融合体のことです。

 生きている人間と獣人族を無造作に合わせたと聞いたことがあります。」


 私は関心してレオさんとアーロックさんの間に

 座ってるクリスさんの方を向いた。


「クリスさんは物知りなんですね!」


 そういうとクリスさんは少々顔を赤らめ、白ワインを進めた。

 可愛いところあるじゃん!と思い、ジャランを撫でていた。


「まぁよくある都市伝説の一つさ!本当は錬金術師なんて大層なもんじゃねぇ。

 きったないお金を作っては使い切るゴミクズ貴族の戯れだ。

 まぁそこらへんはおいおいだな!!

 職業はレオが戦士ファイターで俺っちが偵察者スカウターだ!」


 ジャランは私の手からするりと抜けだしテーブルの食べ物を食べ始めた。

 そしてクリスさんがジャランに向け問いかけた。


「偵察者とは...うむ。珍しいな。得意魔法はなんだ?」


 クリスさんは自身の飲み物を飲みながら不思議そうな顔をしていた。

 するとジャランが答えた。


「レオは火と土が得意でな!俺っちは水と風ってことだ!」


 そしてサラさんがジャランとレオさんの方を向いて笑顔を振舞った。


「お互いの弱点を補っているのね。良いコンビね!」


 サラがうんうんと頷きながら、赤ワインを進めている。

 そしてネイルさんが構図をしまい、立ち上がった。


「それでは最後に私ですね。

 名前はネイルリア・シュヴァリエと申します。

 種族は...天使です。」


 天使と言った瞬間みんな飲んでいたり食べていた物を全て吐き出した





 レオさんと私以外は全員目が点になった。

[[[[はぁ!?天使!?]]]]

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