第13話 銀狼との戦い:中編part2
決闘を終え暫く、ギャラリーは勝者をすっかり自らの当主と迎えていた。
>>当主!今の気分はどうだ?
当主!何か喋れよw<<
>>当主!当主になった意気込み言え!
当主!やっぱ何でもないw<<
「まずはおめでとう。お前が俺の後釜だ。まだ俺が当主だが、たった今次期当主はお前に決定した」
晴れて盗賊の長となった少年は、向けられる歓迎とは裏腹な心境でいることを団員達は知らない。
「なんで呼び方まで変わってんだよ。当主にはなる気ないし勇者って呼んでたろ」
決闘を制したのは勇者。激闘の末、負傷した左腕を抑えながらもツッコミを入れる余裕を見せる。
「痛てて...そこに寝てるグレーを救護してやってくれ」
今になって俺も無茶なことをしたと実感する。最後はグレーに左腕を敢えて先に噛ませることで当てられたが、それができたのは動きが鈍っていたからだ。となるとやはり、最初に当て損なったスタンガンが思いの外効いていたのかもしれない。
「勇者よ。次期当主の命令に逆らう者はいないはずだ、提示した交渉は検討しよう」
「シルバー本当か⁉︎」
やけに聞き分けが良い気もするが、ひとまず交渉は成立したらしい。俺は羊の村を救うことに成功したみたいだ。
「酷い怪我だ。急ぎ救護の手配をする」
「それなら先にグレーを頼む、電撃もろに浴びて心配なんだ」
瀕死の狼を担ぎ勇者は治療を急ぐよう指示する。しかし、ギャラリーはそれを良しとしない様子でいた。
>>決闘だろ、敗者は殺せ!
そうだ殺せ!>>
>>さっさと殺せ!
処刑しろ!>>
『決闘』
中世ヨーロッパでは、剣闘士達が日々生死を賭けた決闘をしていた。決闘の決着はどちらかが死ぬことであったが、敗者が生き残った場合その処遇を決めるのは観客に委ねられたという。
「お前ら何て...何言ってんだよ⁉︎」
こいつら正気じゃない、これが瀕死の仲間に対する仕打ちかよ??
団員達がグレーの処遇について騒然とする中、中立的な立場を取った人物が一人。
「シルバー、黙ってないで止めろよ!」
俺の問いかけにシルバーは表情一つ変えず、淡々と応答した。
「奪い合いで決めるのが盗賊団の道理。気が済むまでやり合え」
当主の判決により盗賊団の意向は固まってしまったらしい。瞬く間に俺とグレーの二人は包囲され、完全に退路を絶たれてしまった。数名の団員が奪取を試みたのか目の前まで近寄る。しかし、何故だか敵意は感じられない。その様子の異変はシルバーも見逃さなかった。
「それがお前たちの応えだな」
>>当主、盗賊にも友情はあるんすよ
本当に良かった。グレーの処刑に反対する団員がいてくれて。先程まで戦っていたからだろうか、味方する狼の存在が今はとても心強い。
双方の対立に際し、背中のグレーと共に俺はこの場を脱することに専念する。
「足止めはできそうか?」
>>正直少し厳しいな
形勢が傾いたとはいえまだ拮抗した状況が続く。
空はもう夕暮れに差し掛かり日没に近づく頃合いの中、遠く沈む日の先から次第に聞こえる足音。この場にいる一同がそれに気づき途端に目線を向ける。
「勇者様!助けに参りました!」
聞き馴染みのあるこの声に、まさかここまで安堵する日が来るとは思っても見なかった。ハナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「勇者様!全員ぶっ飛ばせばいい?」
ラビ...!心強いよ。けどくれぐれも穏便に頼む。
土壇場で仲間との合流を果たした勇者、これにより形勢は逆転した。かに思われたのだが、、
「これは団員間の争いだ。その小娘共には退いて貰おう」
物凄い威圧を放つ狼、すっかり中立的な立場だと油断していたが遂にその重い腰を上げたか。しかしその言葉には少し違和感がある。
「なあシルバー、もしかして俺を団員扱いしてない?」
晴れて勇者から盗賊団、"飢えたる銀狼"の一員となった今井俊介。これは盗賊が動物の国を変えr...
「いや盗賊にならないから!」
俺は動物好きだがケモナーじゃない ソーヘー @soheisousou
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