第12話 銀狼との戦い:中編part1

 シルバー主催のもと、ついに決闘の賽は投げられた。両者張り詰めた緊張の中、次期当主の誕生を見届けんとする盗賊達の歓声が一層際立つ。


「こっちから行くぞ、勇者!」


先制攻撃を仕掛けたのはグレー。俺は右手にスタンガンを握り締め、間合いぎりぎりまで寄せ付ける。


「そこだ!」


ビリリッ

        バチバチバチバチッ


       [充電:75%]


 右手から放たれる閃光は、突進するグレーの右肩を擦った。ぎょっとした表情を見せ、身の危険を感じた様子で体制を立て直すよう後退りする。


「勇者...今何しやがった⁉︎」


今のは躱されたか、、しかし流石の威力だなこのスタンガン。これなら直撃すればグレーを確実に倒せる威力だ。


「どうしたグレー?もう攻めて来ないのか?」


先程まで闘争心を剥き出しに襲いかかってきたグレーは、すっかり警戒した様子で俺の動きを伺っている。不意打ちはもう通用しないだろうな...回数制限がある分、長期戦が見込めない俺は短期戦で決めるしか道がない。初手で決着がつかなかった現状はかなり不利だといえる。


「この武器、驚いたろ?何度でも撃てる優れものさ」


「何度でも?ハッタリだろ」


ああ...その通りだよ、これはハッタリだ。俺がグレーに勝つには残り3回をどう使うかが鍵になる。当たれば勝ちなんだ...!!回数のブラフを悟らせない為にもここは攻め続けるのが得策だろう。


「ハッタリかどうか、確かめてみな!」


一転攻勢、スタンガンを片手に今度は俺がグレーを攻め続けた。しかし、、、


バチバチバチバチッ

  [50%]

              バチバチバチバチッ

                [25%]


これが狼の瞬発力なのか...?俺の攻撃は立て続けに躱されてしまった。結局、有効打を与えることは叶わずに僅か"1回"を残す形となってしまった。


「どうした!もう終わりか⁉︎」


もうハズすことは許されない。次の一手を確実に決めるため、俺は慎重になる他なかった。それはグレーも勘付いている様子でいる。クソ、万事休すか。


「提案なんだが、次の攻撃はお互い同時に仕掛けないか?」


「は?意味わかんねーよ」


グレーは眉をひそめ当然な反応を見せる。


「攻守がターン制になってる今の状況。観てるお前らはどう思う?」


 会場は突然の問いに騒然とし、視線は自然とその発言者へと集中する。


「俺が敗けグレーが勝ったとして、決闘で避けてばかりのボスに従えるのか?団員の諸君は?」


    >>挑発かよ!


    >>グレーさっさとやっちまえ!


        けど勇者の言い分も一理あるな<<


    >>次期当主はお前だグレー!


        なんだか面白くなってきたなw<<


    >>避けずに闘え


 勇者の焚き付けにより、静寂に包まれた森林にギャラリーの声援と罵倒が飛び交う。会場の盛り上がりは今まさにピークへと達していた。


「因みにこのスタンガン、本当は後残り1回が限界なの」


「チッ...悪意あるな。この空気なら避けないとでも思ってんのか?」


「避けないよグレーは。だって...」


会場の盛り上がりに感化されたのか、先程まで損なわれていたグレーの闘争心はすっかり元通りな様子に見える。ヨダレを滴らせ、まるで飢えた狼みたいだ。対する俺も、初めて経験する命のやり取りに高揚を覚えてしまっている。


「俺はこれに全てを賭ける。お前も喰い殺すつもりでこい!」


「グルルルッ...グワァッッ!!!」


     ビリリッ

        バチバチバチバチッ


        [充電:0%]








































「今そこに立つ者を"飢えたる銀狼"当主に迎える。」


 会場は茫然とし、森林は再び静寂を取り戻した。決闘の勝者を見届けた主催の声だけが会場を木霊する。


果たして勝者は勇者か狼か、、、

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