第6話 奴隷の少女
王都を出発した俺ら三人は、次の村を目指して旅を続けていた。
「まだ着かないのか...」
「もう少しです‼︎頑張りましょう‼︎」
「ファイト‼︎ご主人様‼︎」
ハナとラビに励まされながら、俺はなんとか歩けている...かれこれ王都を出発してから数日が経過していると思う。その間、俺はある疑問を抱いていた。
「王都を出発したときから思ってたんだけど...獣人はよく見かけるのに、人間は一人も見かけないのはなぜだ?」
「それは...ですね」
俺のふとした質問にハナは顔を曇らせた。そんなハナに気を遣い、代わりにラビが俺の質問に答えてくれた。
「この国の人間のほとんどは...王様への反逆の罪で処刑されちゃったんだ」
ラビの話はあまりにも衝撃的な内容だった。
かつてこの国では人間と獣人による大規模な戦いがあったらしく、技術の劣る獣人は多くの血を流した。
そして、現在。見事に戦いに勝利した獣人の王様は、見せしめに多くの人間を大量に処刑したという事だった。
ラビの話の後、ハナは言葉をついだ。
「なんとか生き延びた人間は各地へ散らばり、奴隷として生活しています。それほど、この国の人間への憎悪は根深く浸透しているのです...」
「許せない...この国の争いに無関係な人間を巻き込むなんて、一国の王様が私怨で大量の人間を処刑したなんて‼︎」
俺は王様への静かな怒りを胸にしまった。
空はすっかり夕焼けに染まり、日が暮れようとしていた。
俺は野宿にしようとしたが、ハナが近くに宿屋があると言うので宿屋に泊まることにした。
「ありましたよ‼︎ご主人様」
「ここが宿屋?」
そこには古びた小屋があった。その小屋はお世辞にも宿屋とは思えない外見をしていた。
俺は慎重にその小屋の扉を開いた。
「いらっしゃい」
小屋の中のカウンターに立っていた男は眼鏡をかけたクマの獣人だった。
男は、人間の俺に驚くこともなく話を続ける。
「泊まっていくのか?」
「三人で、一部屋だけお借りします」
「三名様だ、案内しろ」
「はい、ご主人様」
男の後ろから、テクテクと少女がこちらに歩いてきた。その少女の服は小汚く、よく見ると首輪もつけられていた。その容姿はまるで...
「これがこの国の奴隷...なのか」
その少女は俺がこの国に召喚されて初めて出会った、
人間の少女だった。
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