第5話 これが俺の戦い方
勇者になると決意した俺は、冒険に必要な準備をするために王都へと向かっていた。
「着きましたよ、ご主人様」
「これはすごいな」
街中のいたるところに動物の王国を象徴するシンボルがある。その中心にある大きな城は王様の偉大さをものがたっている。
「ここは完全動物国家レオ、この国の王様が動物と人間との差別化の元凶でございます」
この城にラスボスがいるのか...王都を見ればこの国がどれだけ発展しているのかがわかった。
俺は改めて実感した。俺が相手にするのは王様だけじゃない、この国全体なのだと。
「王様のいる王都でご主人様が人間の勇者だとバレるわけにはいきません」
そう言うとハナはリュックの中から何かを取り出した。
「ご主人様ににはこれで変装してもらいます‼︎」
「まぁ...そうなるわな」
犬に変装した俺は、食料の調達を終えて王都を後にしようとしていたのだが...
「待て、お前さては人間だな‼︎」
王都から出ようとしたその時だった。門番の王国騎士に俺が人間であることが気づかれてしまった。その王国騎士は携えていた剣を抜き、戦闘態勢をとった。
「戦いますか?ご主人様」
「ご主人様は私が守る‼︎」
ハナとラビも剣に手をおき、一触即発しそうな雰囲気になる。俺はこの状況をどうするか必死に考えていた。
「クソッ...戦うしかないのか?戦わずに勝つ方法はなにか、なに...そういえば‼︎」
俺はポケットの中を探る、そしてある物を取り出した。
「そこの騎士さんに提案がある」
「提案?なんだ?」
「これをやるから、俺達を見逃してくれないか?」
俺がポケットから取り出したのは、ハナのおやつのビーフジャーキーだった。本来は犬が喜ぶおやつなのだが、犬の獣人にも絶大な効果を発揮した。
「なんだ?そのうまそうな物は、そんな物では釣られんぞ‼︎」
そうは言っているが、しっぽは正直だった。欲しい、欲しいと言わんばかりにしっぽをブンブンと振っている。俺はゲスな笑みを浮かべて交渉をする。
「どうだ?俺達を見逃してくれるか?」
「くっ...わかった、今日のところは見逃してやる」
王国騎士はそう言うと、道を譲った。俺は約束どおりにビーフジャーキーを王国騎士に手渡し、王都を後にした。
「まさか、あんな方法があったとは...流石はご主人様でございます‼︎」
「私はてっきり戦うかと思ってた」
ハナとラビが俺に関心の目を向ける。
俺も意外だった、あんな方法が通じるなんて思いもしなかったからだ。
「この国の獣人は、動物と同じなんだ。習性や好物を利用すれば...戦わずに勝てるかもしれない‼︎」
小さい頃から溜めてきた俺の動物知識が今、異世界にきて役に立つかもしれない‼︎そう思うと俺は興奮を隠せない。
「俺は戦いなったら絶対に足手まといになると思う...だから、俺は知識を駆使して戦う。もしも、それでも戦うしかなかったら...俺のことを守ってくれるか?」
「当たり前でございますご主人様、そのために私はいるのですから」
「ご主人様は絶対に私が守るからね‼︎」
ハナとラビは俺のことを守ってくれると言っている。俺は勇者なのに、一人では戦うことができない。けれど、動物の知識を駆使すれば...
俺は誰にも負ける気がしない‼︎
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