狩人
北風吹きつける森の中で1人の男が何かを探しながら歩いていた。
男はその手に黒塗りの鉄製らしき弓を、
背に矢を数本、厚い毛皮を着て風から身を守っている。
鋭い眼光放つ彼の相貌は年老いているが、
迷いない足運びは年齢を感じさせないものだ。
彼の名はライアン
長年にわたり1人で狩りにより生計を立てている、
そして今日もまたライアンは狩りの為に獣の足跡を探していた。
ふとライアンは庭と同然でもある森で違和感を感じる、足跡を見つけたのではない。
それは音だった
鳥が鳴くような だが鳥ではない。
まさか と思う。
鉄弓を握る手に力がはいる、
確認しなければならない
村の為に 森の為にそして…
音の発生源に近づくにつれ嫌な予感は増しつつあった。
向こうには川が流れている、
川という事はやはり…
ライアンは木々に身を隠しながら様子を伺う。
大きさは狼より小さく身体の半分程が川に浸かり見えない。
全く動きもしない対象を見て死体だろうかという考えが脳裏をよぎる。同じ調子で音を鳴らしている様は言い知れぬ不気味を感じる。
音のせいで他も寄ってくるかもしれない…
意を決しライアンは警戒しながら慎重に確認に行く。
数メートル程近くに寄り川に浸かった部分が見えた時に驚愕する。
その全容を認めたライアンは決断する
保護しなければならない、我が誇りにかけてと
滝壺に落ちた衝撃で意識を失った私は山小屋風の家のベッドで目が覚めた。
滝壺に突き落とされた私は賭けに勝ったらしい。
いや勝ったと言える状態ではないが私は勝ったという。
まさか助かるとは思わなかったが、やるだけやってみるものだな
首を振れば見えるのは筋骨隆々な外人らしき御老人の背中。
彼が恐らく助けてくれたのだろう、
今は何やら随分とアナログなキッチンで料理をしているようだ。
半身不随で両手不自由の声も出ない私だが礼をしなければならない、どうしたものか…
安心感からか眠たくなってきた……機械なのに…
ライアンは眠りについた少女を眺め再び考える。
なぜ少女は魔獣の身体を持つのかを。
一夜明け、ライアンは窓枠に風が叩きつけられる音で目を覚ました。
窓から外をみれば雪が吹雪いて一面真っ白になっている、暫くは外に出れそうにない。
昨日のうちに獲物を村に卸したかったが運がない。
だが幸運でもあっただろう、あの少女には。
未だ眠り続けている少女は一向に起きる気配がない。
その顔は見たこともないほど整っており、
珍しい短い銀の髪は艶やに光り彼女を彩り、
シミの一つもない顔は16歳ほどだろうか?
首から上なら絶世の美女と言って良い。
問題は首から下の身体…
魔獣と同じ硬い騎士鎧のような体の謎はライアンをもってしても全く分からない。
人間の魔獣などというのは存在しないものと確かに憶えている。
それに、この傷…は他の魔獣につけられたものに間違いない、謎は増えるばかりだ。
頭が痛い問題に目眩を覚えたライアンは目頭をほぐしていた。
私が再び起きると両腕と喉が治っていた!
原型がなかったはずの腕は新品同様にピカピカと白く輝き、喉は声を取り戻していた!
もしや、この御老人こそが私の製作者なのではないのだろうか!
ならば椅子で眠りこけてる御老人を起こさなければ
「御老人、御老人起きてください」
御老人はパッと目を見開くと私をみて微笑み
「********」
言語の壁が…!!全く分からない!!
ええい、ならば肉体言語で語るしかない!
ワチャワチャと身体を動かして経緯を説明してみる、寝て起きたら身体にビックリして歩いてたら熊に襲われ川に身投げしたと……
が、御老人は首を傾げられた…!
意気消沈し不貞寝しようかと項垂れていると御老人が何やら持ってきた。
「********」
全く何を言ってるのが分からないが解った。
目の前に置かれたのはずんぐりした鍋いっぱいのクリームシチュー
食べなさいって事だろう。
スプーンを持ちながら思う、
御老人の優しさは目にしみるものがあるが
私の体で食べられるもなのか?
故障しないのか?
と考えていると疑問に答える声が聞こえた
[[解析中……可能です]]
女性の機械音声が聞こえてきたが御老人の他に誰もいない。
「え?誰だ?」
[[サポートAIです]]
「サポート?」
[[メインの行動を微調整。特殊機能の制御、運転。またはメイン意識の喪失時の運転です]]
「身体にそんなものがあったのか」
[[メイン意識喪失により起動されました]]
「なんと…不幸中の幸いだな。」
「********?」
おっと……御老人が一人芝居をみて訝しんでおられた。
食べなければ…視線が辛い。
食事の後も御老人は、親切に何処からか絵本らしきものを持ってきて私に読み聞かせてくれた。
どうやら私は子供に見られる顔をしているらしい。
絵本は白髭の巨体に全く似合わず、文字と絵を指差してくれるが、指が太くてどれを指しているのか分からなくて苦戦したが一つだけ覚えた。
御老人の名はライアン
彼は自分を指差しそう言った。
私も彼へ返答する為に自身を指差し止まった。
自問する。
人間でない私は誰なのだろうと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます