第144話 パーティーその後
皆、デロデロに酔っ払った状態で帰っていった。
ほぼ素面に近い(飲んだ量は最大)理沙と、それなりにセーブしていた美香が片付けを手伝ってくれ、なぜか多田や佐久間も洗い物をガンガンやってくれ、皆が帰ったあと、元の部屋にもどっていた。ただ、酒と料理と色々混じりあった匂いだけが残った。
「凄かったな」
「だね」
協調性のない人間ばかり集まったせいか、皆自分勝手に喋り、まとまりはなかったが、それなりに楽しく過ごせた。
途中から、奈良と沙織も部屋の中に戻ってきたが、ほぼ二人で喋り、回りがひくほどベタベタしていた。
帰りには、泥酔した(ふりをした)沙織を抱えて奈良は帰っていき、その場にいた人間は奈良が沙織の餌食にかかったと理解していた。
「おまえ……あれで良かったのか? 」
「何が? 」
「……」
好きな相手じゃなかったのか? とは、聞けなかった。多少なりとも感情のあった相手が、他の女と仲良くやっていて、しかも明らかに今晩ヤるだろうというような状態で帰っていったのだから、心中穏やかではないんじゃないかと思われた。ただ、それを恋人の自分が聞くのは違うような気がしたのだ。
「ああ、奈良君? 沙織がやっと本気になれる相手が見つかって良かったよ」
やせ我慢でもなく、素直に友達の恋愛を喜んでいるが、沙織はセフレを増やしただけではないだろうか?
沙織は麻衣子の友達だが、男に対するスタンスは真逆な二人だ。とりあえず食ってみて、相性があえば勢いで恋人へ。なんとなく……だとセフレへ。どうでもよければワンナイトラブだ。
奈良の肩書きから、セフレ以上だろうが、よほどのテクがなければ、数ヶ月でポイだろう。
「おまえがそう思ってるならいいか。ちなみに、男側の恋愛相談にはのるなよ」
「何で? 」
うまくいっているうちはいい。すぐダメになるだろうし、その時再度奈良が麻衣子に迫ってこないとも限らない。
「まあ、何だ。おまえも友達の愚痴は聞きたくないだろ? 」
適当な理由をつけた慧は、麻衣子を抱き寄せ、洋服を素早く脱がせていく。
「お風呂は? 」
「風呂? メンドイ」
「ダメよ、今いれてくるから」
麻衣子は下着姿のまま風呂場へ向かう。
その後ろ姿を見て、すでにヤる気満々の慧は後からついていった。
「シャワーでいいじゃん。酒入ってっし」
衣服を脱ぎ散らかしながら歩き、風呂場についた慧は素っ裸である。
「もう! また脱ぎ散らかして」
片付けに部屋に戻ろうとした麻衣子の腕を引っ張ると、慧は素早く麻衣子の下着も外して風呂場へ連れ込む。
これから後の展開は、まあいつも通りで……。
★
「杏里ちゃん、この後飲みに行こうよ」
「クラブとか行っちゃう? 」
多田も佐久間も、クラブに行くタイプではないし、実際行ったこともなかった。
「うーん、行けない。だって、杏里まだ高校生だもん。はい、これ」
杏里は二人に名刺を渡した。
仕事専用の名刺で、仕事用の電話番号とアドレスがのっていた。
多田達とはラインしか交換していなかったため、二人は連絡先をゲットできて大喜びだ。
「杏里、ここでバイトしてるの。杏里に会いたかったら、ここから連絡ちょうだい。あ、でも、健全なデートクラブだから、お茶したりご飯したりするだけだよ。ちなみに、うちは前金制で、デート代はそっち持ちね」
ちゃっかり営業している杏里は、二人をタクシーに押し込むと、またねーと手を振った。
「杏里ちゃん! 」
さっきから、杏里達の後ろをくっついて歩いていた佑が、不満そうに杏里の腕を引っ張る。杏里は営業スマイルを引っ込めると、スルリと佑の腕をとった。
「やきもち? 」
「別に……」
杏里の仕事には口を出さない約束だったし、多田達にはただの営業だとわかっているから、やきもちではなかった。
「そうじゃなくて、なんで今日のパーティーなんで企画した訳? 」
「面白くなかった? 」
「楽しかったけど……、なんか企んだ? 」
「人聞きが悪いなァ」
杏里は佑の横腹をつねる。
「だって、奈良さんならお姉ちゃんにいいかなって思ったんだけど、期待外れだったんだもん」
「期待外れって……。別に悪い人じゃないよ」
「そう? あれなら、お兄さんでもいいかなって感じだし、あそこでお姉ちゃんに手を出すなんて期待外れもいいとこ」
「手を出す?! 」
佑がギョッとして杏里を見る。さっき、奈良は沙織にいい雰囲気どころか、ちょっとひくくらいベタベタしていたし、ああいうタイプではないと思っていたが、実際がああなら、麻衣子にも似たようなことをした……ということだろうか?
佑にとって、麻衣子は初恋のお姉さんで、そりゃ手を出したいと思った時期がなかったわけではなかったが、結局そういう対象になりえなかった。
「そうなの?! まいちゃんには松田先輩がいるのに! 」
杏里はあんたがそれを言うの? と言うような呆れ顔をしたが、実際のところ杏里と知り合う前にしたちょっとした小細工はバレてない筈で、佑は内心ドキドキしながらも知らん顔を決め込んだ。
「まあ、大したことにはならなかったから、まああのくらいで許してあげたの」
あのくらい……の意味がわからず、佑は恐ろしげに自分の彼女を見る。
だって、見る限り奈良は沙織をお持ち帰りし、悪いことは何もなさそう……ていうか、今晩はお楽しみ! ってことで、許すも何も良いことずくめではないだろうか?
「彼女を紹介するなら、もっとましなの紹介するし。沙織さん相手じゃ、奈良さんは吸い尽くされるだけ吸い尽くされて、あとはポイでしょ。奈良さん、遊びで付き合えるタイプじゃなさそうだし、何よりあまりフラれ慣れてもいなさそうだしね」
姉の親友を酷評する杏里だが、確かに分からなくもない。みなが、餌食になったと感じた筈で、あのペアを祝福したのは麻衣子くらいだろう。
「それが分かってるなら……」
杏里はそれ以上は話さず、佑を引っ張って佑のアパートへ向かう。
「杏里ちゃん、たまには家に帰らないと……」
「帰ってるよ。朝にはね」
忠直が帰ってくるのは朝だし、始発で帰れば外泊はバレない。最近では、バイトの後も佑のアパートへ帰っている杏里だ。
これから後の展開は、まあいつも通りで……。
★
「沙織、沙織……沙織」
「道也(奈良)君! 」
麻衣子のマンションから一番近いラブホを検索し、タクシーで直行した奈良は、とにかく目についた方のラブホに駆け込み、値段も関係なく空いていたスウィートルームのボタンを押した。
鍵を受け取り、泥酔(したフリ)状態の沙織を部屋に連れ込むことに成功し、ベッドに沙織を横たえた途端、沙織の目がパッチリ開き、奈良の唇を激しく求めだした。
キスをしながらもどかしそうに沙織の洋服を脱がせ、パットの入ったブラジャーを剥ぎ取る。あまりに補正下着に頼りきりの貧相な胸には驚いたが、これだけ盛り上がってしまうと、それどころではない。
沙織の名前を呼びつつ、彼女の身体をまさぐるが、元からあまり感度がよくないのか、酔いすぎて感じないのか(自分が下手だとは考えないらしい)、いまいち反応が悪い。
沙織は奈良を押しやると、奈良の上に股がった。
「沙織? 」
「あたしがする! 」
「えっ? あっ……うっ! 」
あまりな沙織の頑張りに、奈良はされるがまま横たわる。彼女の人数としては片手でおさまるくらいだし、それなりにモテてきた奈良は、女子に不自由したことがなく、その手の店に行く必要性もなかった。彼女も普通の真面目女子が多く、沙織のように奔放な相手は初めてだった。そのせい……という訳ではないだろうが、まあかなり早く……。
「ウワッ、早っ! 」
沙織の冷静な声に、奈良の焦りがマックスになる。
「いや、これは沙織が上手過ぎただけで、俺が早いわけじゃないから。ちなみに、まだまだできるし」
「最高、一晩何回? 」
「二回……いや三回かな」
「ふーん……」
奈良は見栄を張ったが、今まで大体一晩一回で、数回などヤったことはなかった。
とりあえず、萎えてないうちにゴムをつけて再チャレンジする。
あまりに早く入れようとしたためか、沙織が眉を寄せ、明らかにさっきまでと違う冷めた表情を浮かべる。
なんとか二回目(沙織にしたら一回目)を無事終わらせると、奈良は満足気に腕枕した沙織の頭をポンポンと叩いた。沙織はうつむいていて表情は見えないが、再チャレンジでなんとか満足したに違いないと、奈良はウトウト眠くなりながら考えていた。
そこへ、スマホの着信音が鳴る。
「あ、あたしだ」
沙織は勢いよくベッドから起き上がると、裸のままスマホに出る。
「はい……ああ、久しぶり~!……今? ああ、うん、いいよ。わかった。じゃあ、後で」
スマホを切ると、沙織はさっさと洋服を着て茫然としている奈良の元にやってきた。
「ごめん、友達に呼ばれたから行くわ。連絡ちょうだい。またね」
奈良に軽くキスすると、軽い様子で部屋を出ていく。
部屋を出た沙織は、エレベーターを待っている間つぶやいた。
「キスはなあ、無茶苦茶上手かったんだけど、SEXは最悪! ド下手過ぎる!! 」
エリート大学で、大学院まで行くなら将来有望だし、本命にしてもいいかなと思っていたが、あんなSEXではセフレだってお断りだ。お口直ししなきゃやってられない。
沙織は、セフレと待ち合わせした場所までタクシーを使うことにした。さっきのタクシー代もホテル代も奈良持ちだったから、そんなに痛い出費にはならない。
タクシーの中で、セフレに待ち合わせ場所を連絡するラインを送る。
たぶんまたこの辺りのラブホにくることになるだろうから、待ち合わせ場所もワンメーターで行ける最寄り駅にしておいた。
同じラブホは止めとかないとね。
一応麻衣子の友達だし、沙織的な気遣いだった。
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