第67話 部室にて

 清華と再開してから一ヶ月、つまりは麻衣子が家を出てから一ヶ月、慧は誰ともSEXすることなく過ごしていた。

 やればできるんだ……というのが感想であるが、たまりまくっているのも事実だ。

 今、麻衣子と復活したら、数日はヤり続けられる気さえする。


 いまだ麻衣子は荷物を取りに来ないから、新しい部屋は決まっていないのだろう。


 慧は、チラリと教室の後ろを振り返って、楽しそうに話している麻衣子達を見上げた。麻衣子は机に腰掛け、長い足を見せつけるように組んでいた。


 クソッ!

 相変わらず、いいスタイルしてやがる。

 あの足!

 あの足を抱え込んで……。


たかだか、パンツ姿の足を見ただけで、慧のムラムラが爆発しそうになる。



 妄想で元気になるって、中坊かっての……。


 冷静になろうと、教科書に目を落とそうとした時、目の端に映った人物にギョッとした。


 清華が教室を覗き込み、慧を見つけるとヒラヒラと手を振ったからだ。


 慧は清華がいる前扉ではなく、後ろ扉に向かう。


「さ・と・し・く・ん」


 慧が動いたのを見て、清華が後ろに回ってきた。


「何やってんだよ? 」

「だって、慧君が連絡してくれないから」

「ちょっと、こっち! 」


 慧は清華の腕を引っ張って校舎から出る。

 辺りを見回し、とりあえず部室棟へ連れていき、部室に向かった。

 まだ授業時間だから、人はいないだろうとふんでいたが、予想通り誰もいなかった。


「ウフフ、いい所あるじゃない」

「何言ってんだよ。で、何で来たんだ? こら、触るなって! 」


 清華は、慧の股関をまさぐってきた。さっき妄想で元気になっていた慧のあれは、一撫でで嫌になるくらい盛り上がる。

 一ヶ月使用していないからか、慧の意思とは別に、清華の手を振りほどくことができない。

 ソファーに押し倒され、清華が慧の上に馬乗りになる。


「ヤバイって! 」

「ヤバくない」


 しばし、慧と清華の攻防がくりひろげられる。


「あっぶね! 」


 慧は、慌ててソファーから転がり落ちて清華から逃れる。


「何で逃げるの? 」

「何でって、もう清華とするつもりはないからだよ」


 清華はクスリと笑って、慧のモノを優しく握った。


「こんなに元気なのに? 抜かないとつらいでしょ? じゃあ、とりあえず口でする? 」


 ああとうなずきそうになり、慧は慌ててズボンの前を手でガードし、ソファーの反対側に逃げる。とにかく誘惑されないようにしようと、気持ちを引き締めた。


「とにかく、もう連絡をしないでくれ。会うつもりも、SEXするつもりもないんだから! 」

「あら、ならなんで最初に会ったの? 何回も抱いてくれたじゃない? 今さら、彼女に悪いとか、慧君らしからぬことを考えてたりする? 」

「彼女は関係ない。今は別れてるから。家も出ていかれたし」

「あらら……。私のせい? なら好都合じゃない。気にせずいっぱいしよ? 」

「好都合なわけあるかよ! とにかく、清華とはしない。」


 慧と清華は、ソファーをグルグル回りながら言い合っていた。

 個室だからか清華の追撃は半端なく、慧をなんとか捕まえようと、必死に手を伸ばしてくる。


「彼女とより戻したいんだ。やっぱり、あいつじゃないとダメなんだよ! 」

「私だって、慧君じゃないとダメなの! 」

「ダンナがいるだろ?! 」

「夫? 夫が使い物にならないから、あなたが必要なんじゃない」

「意味わかんねえ! 」

「一月に三日間だけでもいいわ。他の日は彼女と好きにすればいい。でも、私が指定した三日間は、私と生でヤってちょうだい」

「生でって、何でだよ? ぜってーヤだし! 」


 清華が言っている意味がわからなかった。


「 それぐらいいいじゃない! 」

「それぐらいじゃねえだろ? 」


 バタバタとソファーの回りを走っていると、部室のドアが開き、拓実と理沙がやってきた。


「おまえ、部室は運動場じゃないぞ」


 息を切らせている慧を見て、拓実は呆れ顔で言った。


「たあ君、それより部外者が入ってるのが問題だって。おばさん、関係者以外入らないでほしいんだけど! 」

「おば……」


 十代の子からしたら、確かに清華はおばさんなのかもしれないが、年齢よりも若く見える自信はあったし、たかだか六つか七つ違うくらいでおばさん扱いは納得がいかなかった。


「松田、ちょうど良かった。サークル活動のことで話しがあったんだ。ちょっといいかな? 」


 拓実が自然な形で慧と清華の間に入り、慧の肩を叩く。理沙は、出てけババア!というような、明らかに敵対心いっぱいの視線を清華に向けていた。スマホを手に、腕を組んで清華を睨み付けている。


「慧君、今日……今晩、うちにきてね。」

「行かねえよ」

「絶対に来て! 待ってるから」


 清華は部室から出て行った。


「拓実先輩、話しって? 」

「ああ、いや、まあ、僕ももうすぐ引退だからよろしくねってだけなんだけどね」


 なるほど、一応清華を引き離してくれたのか?


「松田君、センスない! あんなおばさんに手を出して、麻衣子傷つけないでくれる? 」


 理沙は、かなりご立腹なようで、塩でもまきかねない……いや、まいてるよ。どこから出した?


「あの人、既婚者だろ? 今晩うちに来てって、旦那さんは? 」

「さあ? 呼ぶってことはいないんじゃない? 出張が多いみたいだから」

「何よ!松田君行くわけ? 」

「行くわけないだろ! 」


 拓実は、何やら考え込みながらソファーに座った。


「なんで月に三日間なんだろう?」

「はあ? 」

「いやさ、なんか取り込み中だったから、ドアの向こうで聞いてたんだけどさ」


「取り込み中って……どこから?」

「松田君がソファーから転がり落ちた時ね。ドタンって音がしたからドア開けなかったんだし」


 理沙がシレッと言った。


 なんとも微妙な場面だな……。


 理沙は鼻で笑い、そんなのどうでもいいじゃないと拓実の隣りに腰を下ろした。


「で、たあ君は何が気になってるの? 」

「月に三日間ってとこ。」

「松田君とは月に三回もやれば十分ってことじゃない? 」


 理沙の言い方にトゲを感じる。


「三回じゃなくて三日間。三日連続ってことだろう? 」

「月に三日間、発情するとか? 」

「動物じゃあるまいし……」

「人間だって動物じゃん! 」


 二人はウ~ンと考え込んだ。


「俺、帰るから」


 教室に荷物を置いてきてしまったし、一度取りに行かないといけない。


「エーッ! 一緒に考えようよ」


 理沙は、あんたのことでしょ!?と言わんばかりだが、正直清華のことで煩わされるのもうっとおしかった。


「別に、清華の発情期なんか興味ないし」

「もし、あの女がはってたら? 」

「松田、彼女は松田の家とか知らないんだろ? 」

「教えてないですよ」

「だよな。だから、家に来てなんて言うんだろうしな。もし旦那さんが早く帰宅したらアウトだろうに」

「私なら、松田君の後をつけて家を探るね! 家がわかれば押し掛け放題だもん。わざわざこんな広い大学探さないよ」


 確かに……。

 家を見つけられて、部屋の前で騒がれたら入れざるえない。

 凄く面倒くさい。


「とりあえず、荷物は教室に取りに行かないと……。」

「じゃあ、私、時間差で後ついてくよ。もしあの女が松田君の後つけてたらわかるじゃん」


 気のせいだろうか?

 理沙の顔が輝いているような……。


「りいちゃん、探偵物好きだもんね……」


 楽しんでやがる!


「勝手にしろ」


 慧はブスッとして部室を後にした。

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