第37話 陰謀
麻衣子は声を出さないことに必死で、慧にしがみついて唇を噛み締めていた時、慧の動きがパタッと止まった。
慧は眉をしかめて、壁の方を見ている。
「……どうしたの? 」
「シッ! 」
慧は、音が漏れないように出しっぱなしにしていたシャワーを止めた。
すると、何やら声が聞こえてきた。たぶん海の家の客なんだろうが……。
『さっきの女、いい身体してたよな? 細いのに出るとこ出ててよ。足も最高にいかしてた! 』
『ああ、茶髪の方だろ? 顔もありだよな。ケツもいいケツしてたぜ』
『あの足、おもいっきり大股開きさせて、顔埋めてえッ! よがらせてえッ! 大学の合宿とか言ってたよな? どこ泊まってんだろ? 忍びこめないかな? 』
これって?
麻衣子が慧の顔を見上げると、慧はうなずいた。
さっきのナンパ男達の会話らしい。しかも、忍び込むとか不穏な会話をしている。
あの男達が話しているのが自分のことだとわかると、麻衣子はあからさまに顔を歪ませた。不愉快きまわりなかった。
『あの~? 』
『ああ? あんたなに? 逆ナン?
』
『いえ、あの、私、あなた達がさっき声をかけた女の子の友達なんですけど』
この声は?!
女がナンパ男達に声をかけた様で、しかも声には聞き覚えがある。
99%美和だった。
『友達? 』
『はい。彼女、本当はあなた達と仲良くしたかったみたいなんです。でも、友達がいたから遠慮しちゃったみたいで……』
麻衣子の頭が ? マークでいっぱいになる。
美和はそんな嘘を言って、いったい何をしたいのだろう? だから、もう一回声をかければとすすめにきたのだろうか?
『まじ? なら、彼女のアドレス教えてよ』
『それはちょっと……。ほら、合宿で来てるから、みんなの目があって連絡とかできないだろうし。でも、夜中ならみんな寝てるだろうし、部屋にきてくれたらお話しできるかなって言ってました』
『部屋? 』
男達が生唾を飲み込む音まで聞こえてくる。
『はい。ただ、二人部屋で、もう一人の子をどうしようかって、言ってましたけど』
『もう一人って、おまえと代われないわけ? なんならおまえも一緒に楽しむか? 』
男達はイヤらしい笑い声をあげる。
『無理です。部屋割りは決まってるから。それに、私は彼女みたいに、誰とでもできるタイプじゃないから。彼女眠剤とか持ってるから、同室の子は眠らせちゃおうかな……なんて話しもしてましたね。でも、ほら、あまりうるさくして起きちゃっても困るなって……』
それは、理沙に睡眠薬を飲ませて眠らせた隙に、男達に麻衣子を襲わせようと言うのだろうか?
ナンパをすすめるどころか、犯罪の片棒をかつごうとしている美和に、麻衣子は開いた口が塞がらなかった。
『静かに忍び込めばいいんだろ?
なら任せておけよ。なあ? 』
男達はノリノリである。
『彼女、ちょっとシチュエーション萌えするっていうか、Mな面があって、二人に無理やり……みたいなのに憧れてる……っていうか。イヤイヤっていうのがいいみたい』
『マジで?! 』
『任せろ! いくらだって無理やりやってやるよ。で、おまえらの宿ってどこだよ? 』
『ペンションビーチサイドです。彼女の部屋は一階の角で、105です。ちょうど裏口があるんで、夜中の二時に開けときますよ』
『おう! 』
『じゃあ……』
女……美和だろうが……は、男達の元から離れたらしい。
『今の話し、どう思う? 』
『わっかんねえけど、今の女は俺達とあの女をヤらせたいみたいだな。なら、話しにのるのはアリだろ? お膳立てしてくれるってんだから、素直に乗っかればよくね? ヤってる動画とか撮っちまえば、後々騒がねえだろうし。まじ、興奮してきた! 』
『だな。とりあえず、ガムテとか用意すっか? 騒がれて、他の男達にばれると厄介だしな。暴れられてもめんどいから、縄もあった方がいいかな? 』
『二人いんだろ? もう一人もヤれっかな? 』
『睡眠薬使うんなら、ヤれっかもしんないけど、相手によらねえ?
さっきのもう一人の女の方なら、茶髪の女と二回やった方がいいだろ。あんなツルンペタン勘弁だよ』
『おまえ、二回とかできる人? 』
『ったりめえだろ! 最高三回イケるぜ』
それからの会話は、どんな女と何回やったみたいな流れになっていき、聞いていても不愉快だった。
慧も、あんな会話を聞いた後に続きをする気分にもなれず、麻衣子から離れて手に持っていたスマホをいじりだした。
「何してるの? 」
小声で聞くと、慧はスマホの音量を下げて麻衣子の耳に近寄せた。
「途中からだけど、録音しといたんだよ」
確かに、男達の声と女…美和…の声がしっかりと録音されていた。内容もわかる。
「これ、どうするの? 」
「とりあえず、拓実先輩達に相談しよう」
麻衣子達はシャワールームを出て、拓実達を探しにビーチに戻った。
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