第10話 カラオケ部屋
「上條商事の
「
「
沙織が仕切って紹介した。初顔合わせは麻衣子だけになるので、みな麻衣子に向かって自己紹介する。
「この子は徳田麻衣子。まいって呼んでね」
沙織は林の隣りに、多英は安田の隣りを陣取った。麻衣子の隣りには佐々木ということになる。
今日は美香が都合がつかず、男性は一人遅れてくるとのことだった。
「まいちゃんは、まだ十代って本当? 」
「一応」
「三ヶ月前には女子高生だったんだよね?見えないな~」
「そうですか? 」
麻衣子は、佐々木の距離の近さに戸惑いながらも、多英達の知り合いだからとむげにもできず、愛想笑いを浮かべる。
佐々木は二十代中頃くらいだろうか? スーツを着ており、爽やか系サラリーマンに見えた。さっぱりと整った顔は、いかにもモテそうだ。
佐々木は、麻衣子の顔から胸、太腿に目を落とす。
「本当、今の子って発達がいいっていうか、大人っぽいよね」
佐々木の手が麻衣子のウエストに回される。
「ハア……」
多英達に視線を向けると、すでに男にベッタリくっついて、腕を組んだり手を繋いだりしていた。今までバイトばかりで、合コンの誘いを断っていた麻衣子は、合コンってのはこんなものなのかと勘違いする。
多少身体が強張ったものの、拒否する感じのない麻衣子を見て、佐々木はこれはいけそうだと、距離をさらに詰めて座った。
その頃の慧は、駅前で待ち合わせした
「もう、松田君たら連絡くれないんだもん」
愛実は、クリッとした二重を細めて、慧の腕に手を絡めた。
「そっちこそ、彼氏がいるからなかなか連絡できないとか言ってたじゃん」
「すっごい束縛彼氏なんだもん」
愛実は美容系の専門学校に通っており、バイト先で知り合った彼氏と同棲していた。
「今日は大丈夫なのかよ? 」
「あっちも今日は大学の飲み会だから大丈夫。たまには違う相手と遊びたいじゃん」
高校の時から男が途切れたことない愛実は、昔から男好きで有名ではあったが、慧とはこっちで再開し、久しぶり~! と盛り上がり、その日のうちに関係を持った。お互いに後腐れない相手として、身体だけの繋がりで大満足であった。
「やっぱさ、同棲はするもんじゃないね」
「なんで? 」
「だってさ、好きなときに他と遊べないじゃん」
「それを敬遠しての同棲なんじゃねぇの? 」
こいつ、俺以外に何人セフレいんのかな?
確かに同棲しちゃったらやりづれえよな。
「今日だって、高校の時の同級生に会うって言ったら、男か女かうるさく聞いてきてさ」
「で? 」
「女の子って言ってきたよ。写メ送れってさ」
「ヤバいじゃん」
愛実は、ニヤリと笑ってスマホのアルバムを開いて見せてきた。
「大丈夫。この間女友達とカラオケ行ったときの写メ送るから」
そこまでして、違う男と絡みたいかね?
やる相手がいれば、同じ相手だろうが違う相手だろうが構わないけどな。
とは言え、愛実の誘いにのっているのだから、慧も愛実とやる気はないのか? と聞かれたら、ある! と答えるだろう。毎日やれる麻衣子がいるのに……だ。
カラオケにつくと、地下の一番奥の部屋を選んだ。
これは、部屋の前を店員がウロウロしないからで、気兼ねなくラブホ代わりに使用できるのだ。
このカラオケの地下の部屋は、暗黙の了解でヤリ部屋になっており、金のない大学生達には有名だった。
素っ裸にはさすがになれないが、やれないことはなく、愛実もそれを狙ってか、フレアの膝丈のスカートを履いてきている。
地下は四部屋しかなく、すでに一部屋は埋まっていた。部屋の前を通ると、案の定というか麻衣子達のグループだった。
麻衣子の友達の仕切りなら、ヤリ部屋を選ぶだろうなと思ったが、まさにビンゴである。
チラッと中を確認すると、麻衣子にベッタリサラリーマンがくっついているのが見えた。
「チッ! 」
おもわず舌打ちした慧を、愛実は不思議そうに見上げ、自分たちの部屋に引っ張りこんだ。
「松田君、とりあえずビール? 」
「ああ」
ドリンクを一杯づつは頼まないといけないが、それさえ頼めば、二時間は店員はやってこない。
ビールを二杯店員が持ってきて、扉が閉まった途端、愛実は慧の膝の上に股がった。
「飲まないのかよ? 」
「じゃ、一応乾杯! 」
愛実はいっきに飲み干し、さっそく慧の上に馬乗りになる。
これだけ徹底して、セックス目的でこられると、逆に清々しいというか、ただの運動としか思えない。
「おい、おい。生はまずくない?
」
「ピル飲んでるから」
問題はそこだけじゃないよな?
まさか、おまえ性病大丈夫かよ? とも聞けず、とりあえずポケットからコンドームを取り出して、素早く装着する。麻衣子と使っているやつを持ってきていた。
これで心置きなくやってくれ。
愛実をまた膝の上にのせると、愛実は自分で好きに動き出した。
その頃、地下の別のカラオケ部屋は、少しハードな状態になりつつあった。
最初はカラオケを歌ったり、食べたり飲んだりしていたが、王様ゲームが始まり、多英が安田とキスしたあたりから怪しいムードが流れ始めた。
多英と安田は、ゲームに関係なくキスし始め、安田の手はテーブルの下で何やら動いている。
林も沙織とキスしだし、こっちは隠すことなく沙織の衣服の中に手を入れて……。
麻衣子は、他人のキスシーンすら生に見たことがなかったため、とにかく見ないように歌を探すふりをした。
「まいちゃん……」
佐々木の手が、麻衣子の太腿を撫で回してきた。
「いや、あの……」
麻衣子は、他の二人に気づかれないようにと大声も出せず、その手を押さえることしかできない。
佐々木の顔が近寄ってきて、キスされそうになり、麻衣子は顔を背けて必死に避けた。そんな麻衣子の耳に佐々木は舌を入れてきて、べちゃくちゃという音が頭に響く。
内腿からさらに上に這ってくる指を必死で両手で押さえていると、麻衣子の胸に直に逆の手を突っ込んできた。
「すっごい柔らかいね。これは揉まれまくってるでしょ? 」
佐々木はまるで二人しかここにいないかのように卑猥なことを耳元で囁きだした。
「ちょっと……」
恥ずかしさと怖さで、多英と沙織に助けを求めようとしたが、二人ともすでに自分達の世界に没頭している。
やってるの?!
あまりの衝撃に、一瞬頭が真っ白になる。
そりゃ、クラブで男ひっかけたとか、何人とやったとか、二人とも自慢気に話していたが、まさかこんな乱パみたいなことをするとは思ってもいなかった。
「ごめん、トイレ! 」
麻衣子は、佐々木を押しやって、鞄を持って部屋を飛び出した。とりあえずトイレに入り、乱れた衣服を整える。
まさか、慧が言っていたようにいきなり触られるとは思ってもいなかったから、ドキドキがなかなかおさまらない。
トイレのドアが開き、林が入ってきた。
「林さん」
トイレは男女共用になっていたため、慌ててトイレから出ようとしたら、林に腕を掴まれた。
「まいちゃん、佐々木のこと気に入らなかった? 」
「いや、そういうわけじゃないけど……」
麻衣子は、林から目を背ける。さっき沙織と絡んでいたし、友達とそういうことしていた相手を正視しにくかった。
「佐々木、まいちゃんに逃げられてショック受けてたよ」
「でも、あんな人のいるとこで、ちょっと無理って言うか……」
「ああ、まいちゃんは恥ずかしがりやさんなんだね。なんか可愛いな」
林の手が、麻衣子の髪の毛を撫でる。
「いや、別に」
トイレから出ようとするが、林に腕を掴まれたままで、狭い洗面所で壁に押し付けられるような体勢のまま動けなかった。
「ね、キスしたくなっちゃったな」
「えっ? 」
びっくりして林を見上げると、いきなりキスされた。
林の胸を押して、なんとか唇から逃れたが、林は麻衣子の腕を離してはくれなかった。
「ここなら人こないから。なんなら個室入る? 」
「林さん、沙織は? 」
「だって、まいちゃんが佐々木の相手してくれないから、チェンジしたんだよ」
チェンジ?!
チェンジって何??
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