第2話 新歓コンパ
「まいちゃん、いけるね。もう一杯いこうか! 」
「ひゃい! いただきましゅ! 」
すでに泥酔一歩手前の麻衣子は、ひたすら優にカクテルをすすめられていた。
先週初めてクラブに行った麻衣子は、そこで初めてカクテルを飲んだ。しかし、踊りっぱなしでほとんど汗ででてしまい、あまり酔わなかったため、自分はアルコールに強いんだと思い違いをしていたのだ。
踊りっぱなしだったのは、友達はみなナンパされて一人減り、二人減りしていく中で、男より踊っているほうが好きというスタンスを貫いたからだ。怖くて怖くて、早く帰りたかったというのが本音だった。
「まいちゃんってさ、高校の時からそんな感じなの? 」
麻衣子は首を傾げた。
「ほら、髪型とか化粧とか。今時の高校生は、みんなけっこう派手じゃん」
「高木先輩、発言がオヤジです」
向かい側に座り、自分のペースで飲んでいた一年の
少し前の麻衣子を彷彿とさせるような、地味な見た目をしている。
「えー、どこが? 」
「今時のってとこです」
「そっかなあ? だってさ、俺の地元じゃ、みんな地味~だったもん。こっちきてびっくりしたよ、高校生がケバくて」
「つまりは、徳田さんがケバいと、高木先輩は言いたいんですか? 親父発言多過ぎです」
「まぁまぁ、高木はそんなこと言ってないから」
優がさりげなく間に入り、きつい口調の理沙をなだめにかかる。
「派手だなとは思うけど、ケバくないよ」
「派手とケバいの差は? 」
麻衣子に関係なく、ケバいと派手の違いを論争し始めた優と高木と理沙を横目に、麻衣子をはモスコミュールをグビグビあおる。
拓実先輩、いつ抜け出すのかな? 合図とかあるのかな?
麻衣子は、チラチラ拓実のいるテーブルを見る。
拓実のテーブルは、全て女子により囲まれており、熾烈な戦いの結果、拓実の隣りを勝ち取ったのは、Gカップ爆乳の花怜と、二年の
二人とも可愛らしい顔して、肉食系女子というのが共通している。
拓実は、麻衣子を誘ったのなんかすっかり忘れて、二人に挟まれてかなりご機嫌な様子だ。心の中では、今日はどっちをお持ち帰りしようか……など、よこしまなことを考えていたが、爽やかな笑顔を崩すことはなかった。
「徳田さん、水飲んだら? 」
半分目が座った麻衣子の前に、水の入ったジョッキが置かれた。
見ると、同じ一年で同じ講座受講している
銀縁眼鏡に黒髪ストレート、クラス委員にいそうな見た目で、麻衣子のいるグループとは対極にいそうなタイプだ。
「お水~? うける~! 」
麻衣子は、すでに酔っぱらいモード全開で、ただの水の入ったジョッキを持ち上げて、ケラケラ笑いだした。
「そろそろ閉めるぞ。一年は一列に並べ」
一年は全部オゴリであるため、上級生をお見送りしつつ、ご馳走さまでしたと頭を下げるのが通例となっていた。
麻衣子も、ベロベロに酔っぱらいながら、理沙と慧に支えられながら一列に並ぶ。
「ご馳走さまでした! 」
上級生が店を出るまで、一年は声を合わせて挨拶した。
ここからは、サークルの二次会へ行く人達、仲の良いメンバーのみで飲みへ行く人達、帰る人達とバラバラになる。
拓実は女の子達とカラオケへ行ったようだ。
「これ、どうする? 」
理沙と慧が、フニャフニャしている 麻衣子を見下ろす。
「林さん同性なんだから送っていきなよ」
「私は逆方面よ。松田君、同じ方面でしょ? 」
「俺、こいつより駅三つ前なんだよ。こいつ送ったら、帰れなくなる」
二人して麻衣子を押し付け合う。
とりあえず二人で駅まで麻衣子を運び、電車に乗せた。
「じゃ、後よろしく! 」
理沙はサクッと電車から下り、反対側にきた電車に乗って行ってしまった。
「ずり~! 」
慧は、しょうがないから麻衣子の隣りに座る。
「徳田! 俺下りるからな。ちゃんと自分の駅で下りろよ! 」
麻衣子はむにゃむにゃ言うだけで、ほとんど反応ない。
これでは終点までいってしまいそうだった。
慧は大きくため息をつくと、閉まるドアを怨めしそうに見た。
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