「やっぱり性格悪いな、私」

 せっかく広々とした芝生が広がっているのに、こんなにも晴天で気持ちが良い天気だというのに、心はこんなにも荒んでいて、息苦しい。もう二度と、あの時と同じ感覚を得ることはできないのだろうか――

「あ」

 声を漏らし、私は無意識に立ち上がる。木陰から歩み出て――カメラを構えた。胸が高まる。徐々に高揚感と浮遊感が全身に広がっていく。

 広々とした芝生、青空と太陽、ところどころに生えた大木――変わらない世界に迷い込んできたそれは、多くの人の視線を集める。一つ、二つ、三つ、数えるには指も足りない。大きいもの、小さいもの、雪だるまのように繋がっているもの――大量のシャボン玉が、風に乗って飛んでくる。開放感が、一気に押し寄せてくる。

 子供ははしゃぎ回り追いかけ始め、そんな子供を夫婦は楽しそうに眺め、カップルは指を差して微笑み合い、お年寄りは昔懐かしむような笑みを浮かべ、ジョギングやヨガをしていた人も口元を緩ませている。


 そんな中、私は――夢中になってシャッターを切っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る