第3話変化
いつもなら、仕事終わりに帰りながら電話番号をして家に着いた後はメールでやり取りをしながら眠りにつく。
でも、今日は違った。
「電話したい」
突然のメール。
「ダメだよ」「夜だよ」
「大丈夫」「電話したい」
何の前ぶれもなく電話が鳴った。
本音を言えば嬉しかった。だって、私も声を聞きたかったから。
「どうしたの?」
「分からないけど、どうしても桃子の声が聞きたくなった」
「明日も早いし寝ないとダメだよ」
「桃子の声聞いてたい」
「何かあったの?」
「何もないよ」
「あっ、桃子写真送って。顔みたい」
「恥ずかしいからやだよ」
「俺も送るから」
「じゃあ、明日送る」
「約束な」
私達はしばらく話をして眠りについた。
どうして?なんて考えながら電話を切った後もドキドキしていた。
一つ一つお互いの事を知っていく。
今では文字での会話は少なくなり、遠距離恋愛をしている恋人のように毎日を過ごしている。
明日になればお互いの顔も知る事になる。
この関係はどうなっていくのだろう。
不安と期待が入り交じり、私はしばらく眠りにつけなかった。
数日前から少しづつ変わってきているのを感じていた。
以前のような会話は少なくなり、SNSで会話を楽しむ事はほとんどなかった。
その代わり、毎日のように電話をしていた。
「俺様だからな」「俺に口で勝つのは無理だよ」
「知ってるよ」
普通の会話の中の言葉にも私は敏感に反応してしまう。
~これ以上は俺に近づくなと言われているかのように~
出会った頃の関係とは明らかに違うかたちで付き合いは続いている。
彼と話をすればするほど、私は私で居られた。
今までとは違う私がそこに居た。
そう、頑張らなくていい私。
実際会う事がない相手だからだろうか?
何故だか分からないけど、彼と居る時間はとても心地よかった。
「桃子が俺に勝てるのは歳だけか」彼は笑いながら言った。
「わざわざ言わなくていいよ」「他にも何か勝てるかもしれないよ」
「そうだな… 俺を本気にさせてみる?」「それが出来たら大したもんだよ」
私は彼より3つ年上だった。
実際会う事はないだろう相手。
この関係はどこまで続くのだろう?
ふと私は不安と寂しさを感じていた。
今日は仕事が休み、でもいつもの時間に電話が鳴る。
「おはよう」
いつもと同じ朝。
前日の不安な』気持ちが吹き飛ぶくらいに会話が弾む。
「会社着いた」
「うん。行ってらっしゃい」
「また後で」
電話を切った後、私は珈琲を飲みながら幸せの余韻にひたる。
その後は久しぶりに友達とSNSでの会話を楽しみながら時間を過ごす。
12時を過ぎたころ電話が鳴る。持ちろん彼からだ。
「もしもし」「あのさ、後でちょっとお使い行ってきて」
「なに?」
「通話と金かかるし詳しい事聞いてきて」
「うん」
「ちゃんと考えないとな」
ただ嬉しかった。
先の事を考えてくれている言葉が嬉しかった。
電話を切った後、こみ上げてくる幸せを抑えられないまま、出掛ける準備をして車を走らせた。
(彼が大好きな歌を口ずさみながら)
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